強力PCB分解菌Rhodococcus jostii RHA1株が有するIclR型転写制御遺伝子tsdRのビフェニル代謝への関与を明らかにするために、野生株とtsdR破壊株のビフェニル誘導時における遺伝子発現プロファイルを比較した。ビフェニル/エチルベンゼン存在下または非存在下で培養した野生株とtsdR破壊株のtotal RHAを用いてマイクロアレイ解析を行った結果、tsdR破壊株においてビフェニルやエチルベンゼンでの生育時に誘導されるいくつかの遺伝子の誘導性欠如が認められた。特にビフェニルの代謝中間体である安息香酸の取り込みに関与するMFS型トランスポーター遺伝子(ro02388)や、Feの取り込みに関与するシデロフォアを合成すると考えられるnon-ribosomal peptide synthetase遺伝子 (ro00141およびro06664)に関しては、定量的リアルタイムPCRを用いた詳細な転写誘導性評価においても誘導性の明らかな欠失が認められた。以上の結果から、tsdR破壊株におけるこれら遺伝子の誘導性欠如がビフェニルやエチルベンゼンでの生育能低下に関与する可能性が考えられた。 またTsdRにより直接制御される遺伝子を見出すため、tsdRの結合配列の解析を行った。精製したTsdRとTsdRにより直接制御されると考えられているtsdBおよびtsdTプロモーター領域(それぞれ155 bpと250 bp)を用いたゲルシフト解析を行った結果、各領域へのTsdRの結合が観察された。結合が見られた領域の塩基配列を解析した結果、それぞれtsdBプロモーターにはGTGTGGTTGCAATCACAC、tsdTプロモーターにはTGTGACTCGCGTCATAの不完全なInverted repeat配列の存在が見出された。以上の結果から、TsdRはTGTG-N8-CANAのコンセンサス配列に結合する可能性が考えられた。
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