研究課題/領域番号 |
24780069
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
中川 洋史 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (30362081)
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キーワード | 野生酵母 / 産膜 / FLO11 / ワイン / グルコース |
研究概要 |
貯蔵熟成中のワインの品質を著しく低下させるワイン産膜現象の汎用的な防止方法は、未だ開発されていない。研究代表者らは最近、野生産膜性酵母によるワイン産膜現象に、FLO11遺伝子が必須であることを見出した。本研究は、野生産膜性酵母においてFLO11の発現を制御する産膜シグナル伝達経路の全容を解明し、革新的なワイン産膜防止方法の開発に応用することを目的としている。平成25年度は、実際のワイン製造においてもグルコースによる産膜の抑制が、グルコースによるFLO11の発現抑制が主要な原因であるか否かを調べるため、野生産膜性酵母のFLO11プロモーター置換株(FLO11だけグルコース抑制を解除した株)を用いて、ワインを用いた産膜試験を行った。山梨県内で生産された赤ワインに野生産膜性酵母を植菌して静置培養した結果、グルコースをほとんど含まない赤ワインでは産膜を形成したのに対し、グルコースを含む赤ワインでは産膜を形成しなかった。一方、野生産膜性酵母のFLO11プロモーター置換株ではグルコースを含む赤ワインでも産膜を形成した。従って、実際のワイン製造においても、グルコースによる産膜の抑制は、グルコースシグナルによるFLO11の発現抑制が主要な原因であることが示唆された。一方で、産膜シグナル伝達経路の同定のために、野生産膜性酵母株を用いてシグナル伝達因子の候補遺伝子破壊株の構築を行っているが、候補遺伝子の完全破壊株の構築には至っていないため、完全破壊株の構築を進めている。なお、本研究で構築したワインを用いた産膜試験系は、今後、実際のワイン製造において産膜防止効果を示す物質の検定系としても利用できることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
産膜シグナル伝達経路の構成因子の同定にはまだ至っていないが、実際のワイン製造におけるグルコースによる産膜の抑制は、グルコースシグナルによるFLO11の発現抑制が主要な原因であることを示唆できた。また、我々が構築したワインを用いた産膜試験系は、今後、実際のワイン製造において産膜防止効果を示す物質の検定系としても利用できると考えられる。上記の重要な成果が得られたことから、現在までの達成度を(2)とさせていただきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、野生産膜性酵母株において産膜シグナル伝達因子の候補遺伝子の完全破壊株の構築を完了し、野生産膜性酵母における産膜シグナル伝達経路の実体を明らかにする。明らかにできた産膜シグナル伝達経路の人為的コントロールによる産膜の抑制に、我々が構築した実際のワインを用いた産膜試験系を用いて挑戦し、革新的なワイン産膜防止法の開発につなげる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、私が所属する研究室の引越しが行われたため、引越しの準備や引越し後の研究室のセットアップ等で、長期間、実験が出来ない状況となったため。 物品費としては、酵母及び大腸菌培養用試薬及び器具、酵母用各種抗生物質、分子生物学実験用試薬及び器具、合成オリゴヌクレオチド、産膜実験用ワイン等の消耗品の購入に使用する計画である。旅費としては、日本農芸化学会大会等で成果発表を行う際に必要な国内旅費として使用する計画である。人件費・謝金としては、本研究課題の研究成果を国際誌に投稿するための、英文校閲費用として使用する計画である。その他の経費としては、本研究課題の研究成果の論文公表に必要な国際誌(学会誌)掲載料と、DNAの塩基配列解読のための外注費用として使用する計画である。
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