研究課題/領域番号 |
24780069
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
中川 洋史 山梨大学, 総合研究部, 助教 (30362081)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 野生酵母 / 産膜 / ワイン / FLO11 / グルコース |
研究実績の概要 |
貯蔵熟成中のワインの品質を著しく低下させるワイン産膜現象の汎用的な防止方法は、未だ開発されていない。研究代表者らは野生産膜性酵母によるワイン産膜現象に、FLO11遺伝子が必須であることを見出している。本研究は、野生産膜性酵母においてFLO11の発現を制御する産膜シグナル伝達経路の全容を解明し、革新的なワイン産膜防止方法の開発に応用することを目的としている。これまでに、実際のワイン製造において、グルコースによる産膜の抑制は、FLO11のグルコース抑制により制御されていることを明らかにしている。グルコース抑制を担う主要なシグナル伝達経路として実験室酵母ではSnf1経路が知られているが、本経路が野生産膜性酵母におけるFLO11のグルコース抑制に関与しているか否かを調べるために、Snf1経路の構成因子の遺伝子破壊株の構築を野生産膜性酵母株において進めている。一方で、FLO11のグルコース抑制機構を制御することで野生産膜性酵母による産膜を防止するためには、ワイン製造環境の酵母において、グルコース枯渇時にFLO11の転写脱抑制が起こらないようにすればよいと考えられる。しかしながら、一般にグルコース抑制を担うシグナル伝達経路は好気的基質の代謝に必要な数多くの遺伝子のグルコース枯渇時における転写脱抑制にも必要であるため、本経路の制御によってワインの風味に影響を与えてしまう恐れがある。従って、実際のワイン産膜防止のための標的因子としては、グルコース枯渇時のFLO11の転写脱抑制に必要であり、かつFLO11以外の遺伝子の発現には最小限の影響しか与えない因子が望ましい。そのような視点で調査を行った結果、グルコースシグナル伝達経路の下流に存在し、かつFLO11の転写活性化因子であるFlo8pタンパク質を標的因子の候補として見出した。そこで、野生産膜性酵母株においてFlo8pをコードするFLO8遺伝子の破壊を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野生産膜性酵母における産膜シグナル伝達経路の構成因子を同定するために、野生産膜性酵母株においてシグナル伝達経路の候補遺伝子の破壊を行ってきたが、未だ産膜シグナル伝達経路の構成因子の同定には至っていない。そのため、本研究の最終目的である、産膜シグナル伝達経路の構成因子を標的としたワイン産膜の防止方法を開発できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
野生産膜性酵母におけるFLO8および他の産膜シグナル伝達経路候補遺伝子の破壊を完了し、ワイン産膜シグナル伝達経路を解明する。さらに、当該シグナル伝達経路の人為的コントロールにより実際にワインにおいて産膜を抑制できるか否かを検討することで、革新的なワイン産膜防止方法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
野生産膜性酵母における産膜シグナル伝達経路の構成因子を同定するために、野生産膜性酵母株においてシグナル伝達経路の候補遺伝子の破壊を行ってきたが、未だ産膜シグナル伝達経路の構成因子の同定には至っていない。そのため、本研究の最終目的である、産膜シグナル伝達経路の構成因子を標的としたワイン産膜防止方法の開発のための実験を行うことができておらず、その分の未使用額が発生している。
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次年度使用額の使用計画 |
産膜シグナル伝達経路の構成因子の同定と、ワイン産膜の防止方法を開発するために必要な、酵母及び大腸菌培養用試薬及び器具、各種抗生物質、分子生物学実験用試薬及び器具、合成オリゴヌクレオチド、産膜実験用ワイン等の消耗品の購入、DNAの塩基配列解読のための外注費用、本研究課題の研究成果を国際誌に投稿するための英文校閲費用、および、論文公表に必要な国際誌(学会誌)掲載料として使用する計画である。
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