研究課題/領域番号 |
24780071
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木谷 茂 大阪大学, 生物工学国際交流センター, 准教授 (10379117)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗生物質生産 / 放線菌 / エバメクチン / Streptomyces avermitilis |
研究概要 |
放線菌の二次代謝は、ホルモン様低分子シグナルにより誘導され、多彩な生物活性物質をもたらす。60%の放線菌群で二次代謝誘導を行うブチロラクトン型シグナル経路の研究を通じて、研究代表者は、残り40%の放線菌群で作動する新規シグナル物質(ブテノライド型シグナル)を、二次代謝に関する情報が豊富なStreptomyces avermitilisより単離・構造決定し、新たな制御カスケードを報告した。本新規カスケードの詳細は、放線菌二次代謝制御に学問的ブレークスルーをもたらすと同時に、休眠遺伝子群の強制発現による新規生物活性物質の生産誘導など、産業への展開価値が高い。 本研究では、1.ブテノライド型シグナルが如何なる遺伝子を経由して二次代謝を誘導するのか?という制御カスケードの解明、2.ブテノライド型シグナルが作動する放線菌群の確定とその添加による二次代謝の覚醒、を目的とする。 本年度は、ブテノライド型シグナル受容体AvaR1と受容体候補AvaR2の機能を解析した。組換えAvaR1タンパク質を調製し、そのDNA結合能について検討したところ、複数箇所のAvaR1結合DNA配列を同定することに成功した。 次に、avaR1またはavaR2の遺伝子機能破壊株を構築し、そのエバメクチン生産量を測定したところ、野生型株と比較して各破壊株のエバメクチン生産量に変化は観察されなかった。しかしながら、AvaR1結合DNA配列がブテノライド型シグナル生合成遺伝子の上流領域に存在したため、AvaR1がブテノライド型シグナルの生産を調節するのではないかと推測した。そこで、avaR1破壊株の表現型を精査したところ、ブテノライド型シグナルの生産量が増大していたことから、AvaR1はブテノライド型シグナルの受容体かつ生産抑制因子であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、ブテノライド型シグナルの受容体または受容体候補遺伝子の単純機能解析は終了した。受容体候補AvaR3はエバメクチン生産に関与することを既に明らかにしていたが、予想外にも受容体AvaR1または受容体候補AvaR2がエバメクチン生産に直接に関与しないことが本年度の研究より明らかとなった。 今後、avaR1 avaR2遺伝子二重破壊株の構築とその表現型の精査、または他の組み合わせの二重破壊株を解析することが新たに必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
受容体候補遺伝子群の遺伝学的関係を明らかにするため、受容体遺伝子avaR1を軸に受容体候補遺伝子に対して、二重破壊株を構築し、エバメクチン生産やブテノライド型シグナルなどの表現型を解析する。 ブテノライド型シグナル依存エバメクチン生産制御因子の候補遺伝子を推測するため、ブテノライド型シグナルをブテノライド型シグナル非生産株に加え、転写が変化する制御遺伝子を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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