研究課題/領域番号 |
24780071
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木谷 茂 大阪大学, 生物工学国際交流センター, 准教授 (10379117)
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キーワード | 抗生物質生産 / 放線菌 / エバメクチン / Streptomyces avermitilis |
研究概要 |
研究代表者は、新規シグナル物質(ブテノライド型シグナル)を産業放線菌Streptomyces avermitilisより単離・構造決定し、新たな二次代謝制御カスケードの存在を報告した。本研究では、1.ブテノライド型シグナルが二次代謝をどのように誘導するのか?という制御カスケードの解明、2.ブテノライド型シグナルが作動する放線菌群の推定とその添加による二次代謝の覚醒、を目的とする。 本年度は、まずavaR1ブテノライド型シグナル受容体遺伝子に近接するavaR1相同遺伝子avaR2の機能を解析した。構築したavaR2破壊株の培養条件を詳細に検討した結果、avaR2遺伝子破壊は20%程度のエバメクチン生産低下を示したことから、AvaR2はエバメクチン生産の正の調節因子ではないかと推測された。次に、AvaR2とAvaR1の機能関連を調べるべく、avaR1/avaR2二重破壊株を構築したが、明瞭なエバメクチン生産の変化を観察することはできなかった。したがって、AvaR2とAvaR1の間には、機能相関がないことが明らかとなった。 2つ目に、ブテノライド型シグナルの実用的応用性を検証するため、ブテノライド型シグナルを各種放線菌に投与し、二次代謝産物生産の変化を解析した。放線菌50種の培養液に、ブテノライド型シグナルを含む二次代謝シグナルを添加したところ、7種の放線菌にて二次代謝プロファイルがシグナル依存的に変化した。したがって、二次代謝シグナルの外部投与は物質探索または物質生産向上に有効であることが明らかとなった。 最後に、ブテノライド型シグナルを産生する放線菌種について検討した結果、調査した30種の放線菌のうち、6種の放線菌がブテノライド型シグナル生産活性を示したため、ブテノライド型シグナルはエバメクチン生産菌以外でも広く分布することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、ブテノライド型シグナルの受容体または受容体相同遺伝子、avaR1/avaR2二重破壊株の表現型解析は終了した。AvaR1はシグナル生産抑制因子であることが明らかとなったが、AvaR2はエバメクチンの正の制御因子であることが示唆されるものの、その機能については二重破壊株の解析においても判然としない。今後、AvaR1とAvaR2の他のエバメクチン制御因子AvaR3との機能関係を明らかにするべく、遺伝子二重破壊株の構築とその表現型の解析が必要であると考えている。 一方、ブテノライド型シグナルは物質探索または物質生産向上に有効であること、またエバメクチン生産菌以外でも広く分布することが示唆された。したがって、ブテノライド型シグナルの応用的有効性が示されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
ブテノライド型シグナルの受容体または受容体相同遺伝子の遺伝学的関係を明らかにするため、二重破壊株を構築し、エバメクチン生産やブテノライド型シグナルなどの表現型を解析する。また、各タンパク質を調製し、DNAまたはブテノライド型シグナルに対する結合能を分析することにより、その機能を解析する。 ブテノライド型シグナルの応用的有効性をさらに実証するため、シグナルに依存して生産誘導される化合物の化学構造を同定する。また、シグナルを生産する放線菌種のブテノライド型シグナル生合成系の有無について、遺伝学的観点から検討する。
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