今年度は、予定していた質量分析計の使用が適わなかったので、別の角度から窒素同化機構に関するデータ取得を目指した。まず、窒素源の試薬の検討を行い、(NH4)2SO4を用いることとした。窒素源添加後の応答を野生株、MGB874両株を対象に吸光度計で検討した。その結果、MGB874は、窒素源添加においても野生株と遜色ない細胞増殖能を有していることが分かった。次に、0.2%(NH4)2SO4添加後の遺伝子発現応答をReal-time PCRで検討した。その結果、MGB874では、窒素同化に関わるgltA、gltCの発現量が窒素源添加前(栄養飢餓状態)で大きく発現変化していることが明らかとなった。このことは、通常培養時においてMGB874のグルタミン酸の蓄積が見られることと一致する。その原因として、MGB874では主要シグマ因子の結合プロファイルに違いがあるのではないかと考え、GeF-Seq法によるsigA結合領域の同定を行った。条件検討を詳細に行い、HiSeqによるシーケンスを実施した結果、MGB874でglnRの上流にsigAが新たに結合していることが明らかとなった。gltAの上流にglnRは位置するので、グルタミン酸合成が積極的に行われていることの一要因であると考えた。さらに、12個の新規結合領域の同定に成功した。この結果は大変興味深く、MGB874での高物質生産性、グルタミン酸の蓄積に関与しているものと思われる。
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