研究課題/領域番号 |
24780074
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
阿野 嘉孝 愛媛大学, 農学部, 准教授 (00403642)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | キノプロテイン / グリセロール脱水素酵素 / ピロロキノリンキノン / 酢酸菌 / Gluconobacter |
研究概要 |
キノプロテイン・グリセロール脱水素酵素(GLDH)は、Gluconobacter属酢酸菌の細胞膜にみられる特徴的な酵素であり、L-ソルボース発酵など産業的に重要性の高い酵素である。本研究課題では、GLDHの特異な触媒機能を遺伝子およびタンパク質レベルで理解するとともに、得られた情報にもとづいて操作することでGLDH機能を高めた新規な「酸化発酵系」を創出することを目指している。本年度は遺伝子工学的解析を進め、以下のような成果を得た。 1. GLDHの一次構造の比較解析:触媒能の異なる2菌株のGLDHの一次構造を比較するために、それぞれのGLDH構造遺伝子sldBAをクローニングし較した。両者のアミノ酸配列は、触媒サブユニットSldAで88.5%、細胞膜貫通サブユニットSldBで84.9%という、同属菌株間では比較的低い相同性を示した。SldAでの相違点はN末端領域に特に集中しており、特にPQQ酵素の特徴的なプロペラ構造を形成するW1-W2間、およびW2内部に大きな違いが確認された。したがって、この部位の相違点がGLDHの酵素学的性質の相違をもたらしている可能性が示唆された。 2. GLDH発現系の構築:変異体GLDH の評価系を構築するために、まず酢酸菌を宿主としたGLDH発現系を準備した。内在GLDHの影響を排除するために、sldAの破壊株を作製し、これを宿主として、それぞれの菌株の構造遺伝子を発現ベクターを用いて破壊株へ導入した。細胞膜画分での解析の結果、野生株と同様、酵素学的性質の違いが確認できたことから、これらの性質の違いは上記1で確認された一次構造の違いに起因することが明確となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に掲げているGLDH構造遺伝子のクローニングはすでに完了しており、一次構造の比較解析を完了した。計画にはGLDHの精製を行う予定にしていたが、微生物の大量培養設備および酵素精製環境の不備があり、現在まで完了できていない。そのため、環境整備と並行して、今年度予定であったGLDHの発現系を前倒しにして実施することで対応し、全体的な計画は大きな遅延なく進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は発現させた2つの野生型酵素の酵素学的特徴の比較解析などタンパク質レベルでの解析を行い、GLDHの触媒機能を明らかにしていく。 1. 発現させた野生型酵素を精製し、基質特異性の調査、金属イオン要求性、キネティクス解析を実施し、各酵素の特徴の違いを明確にしていく。 2. 野生型酵素や他のキノプロテインとの一次構造の違いに着目し、部位特異的変異を導入し、その効果を調べる。特に、金属イオン要求性に着目して、PQQ結合性の安定化を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養試薬等の一般試薬類、界面活性剤等の酵素精製関連試薬の購入のための物品費が主な用途となる。また、研究成果は日本農芸化学会や日本生物工学会で発表する予定であり、学会参加のための旅費を計上する。
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