研究概要 |
キノプロテイン・グリセロール脱水素酵素(GLDH)は、Gluconobacter属酢酸菌の細胞膜にみられる特徴的な酵素であり、L-ソルボース発酵の鍵酵素として機能するなど産業的に重要性の高い酵素である。本研究課題では、GLDHの特異な触媒機能を遺伝子およびタンパク質レベルで理解するとともに、得られた情報にもとづいて操作することでGLDH機能を高めた新規な「酸化発酵系」を創出することを目指している。本年度は、下記2点を実施し、以下のような成果を得た。 1. GLDH過剰発現系の構築:前年度構築した発現系では野生株よりも活性が劣ることが判明し、酵素精製およびその後の解析には不適であった。そのため、細胞膜酵素の過剰発現に実績のある酢酸菌由来プロモーター、Pgo1068, Pgox0264, Pgox0452を利用した発現系を構築した。プロモーターの改変により、野生株の2倍程度のGLDHの発現量の上昇を確認した。 2.他のキノプロテインとの一次構造の比較解析と変異体酵素の作製:補酵素PQQの結合安定性に関わるアミノ酸残基を決定するために、PQQの結合が安定な酢酸菌GDHとキレート剤の影響を受けやすい大腸菌GDHとの一次構造比較により、十数箇所のアミノ酸残基の関与を予測し、当該部位の部位特異的置換を行った。シーケンス解析の結果、任意の箇所に変異を導入できていることを確認した。変異の影響を細胞膜レベルで検討中である。
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