研究課題/領域番号 |
24780075
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
加藤 伸一郎 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (60346707)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 含硫化合物 / システイン |
研究概要 |
細胞内で硫黄原子はタンパク質中の含硫アミノ酸をはじめ、グルタチオン、コンドロイチン硫酸などの形で多量に存在している。それ以外に存在量は微量ながら、チアミン、ビオチン、リポ酸、鉄-硫黄クラスター、モリブドプテリンなどの補因子や、tRNAに含まれるチオウリジンなどの核酸塩基にも硫黄が含まれている。このような「含硫化合物」は、補酵素、酸化還元反応の活性中心、紫外線センサーなどの機能を有することが知られており、生理的に極めて重要な役割を担っている。含硫化合物の生合成に関わるタンパク質の同定と反応機構の解明がなされれば、含硫生理活性物質の効率的な生産システムを構築することが可能になると期待される。これまでの研究により、L-システインをL-アラニンに分解するシステインデスルフラーゼ(CDS)が硫黄原子の供給を司っており、基質由来の硫黄原子はCDS分子内にペルスルフィドとして保持された後、他のタンパク質に転移されていくことが明らかになっている。本申請課題では、ビフィズス菌(Bifidobacterium adolescentis)のCDSを対象としてCDS活性やペルスルフィド形成能に影響を与えるタンパク質群を解析した。CDS遺伝子クラスターに存在する5種の遺伝子の発現系をそれぞれ構築し,各遺伝子産物をそれぞれ添加してCDS活性の測定を行ったところ、Bad0710H6、Bad0712H6、Bad0715H6を酵素反応液に添加してもCDS活性に変化は見られなかったが、Bad0711H6、Bad0714H6を添加した場合にはCDS活性がそれぞれ5.4倍、5.2倍に上昇していた。また、オートラジオグラフィーを行った結果、Bad0711H6、Bad0714H6によってCDSの35S標識量が顕著に減少していたことから、硫黄原子の転移反応にこれらのタンパク質が関与していることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硫黄を含有する新規生理活性物質の生合成メカニズムについて、ペルスルフィド形成能を指標に生化学的・分子生物学的な手法を用いて解析を行った。その結果、硫黄供給を司る酵素システインデスルフラーゼの活性を上昇させるタンパク質群を見出し、それらの作用機構について貴重な知見を得た。また、還元剤非存在条件にて行ったオートラジオグラフィーの結果、この活性上昇はCDS分子内に形成されたペルスルフィドの除去によるものであることを明らかにした。含硫化合物生合成システムのさらなる理解には、特定のアミノ酸残基を改変した変異型酵素の特性解析など詳細な分子メカニズムの解析が欠かせないが、これらについてもすでに着手している。今年度得られた知見を端緒として、より詳細な含硫化合物生合成システムの分子メカニズムの解析を推進することができると考えられる。以上の点により、上記の達成度と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度、CDSの活性化能とペルスルフィド除去能が認められたBad0711H6、Bad0714H6CDSについては、CDSとの相互作用の有無をSPR解析装置および免疫沈降により調べる。また、引き続きペルスルフィド形成能を有するタンパク質の探索を継続し、CDSとの硫黄受け渡しの有無をオートラジオグラフィーにより確認する。その際、硫黄原子の授受に必要とされる因子(ヌクレオチドや金属など)の検討を行いその添加効果を解析する。そして、L-[35S]システイン存在下で一定時間インキュベートした後、プロテアーゼ処理を行い、35Sにより標識されたペプチドを高速液体クロマトグラフィーにより単離する。このペプチドをMS/MS解析することにより活性型硫黄の保持に関与するシステイン残基の同定を行う。さらにシステイン残基をアラニンに置換した変異型タンパク質を調製して機能解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|