研究課題/領域番号 |
24780077
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
上村 聡志 青山学院大学, 理工学部, 助教 (10399975)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 圧力生理学 / 出芽酵母 |
研究概要 |
EGO複合体形成メカニズムの解析 Ego1,Ego3,Gtr1,Gtr2によって形成されるEGO複合体は液胞膜に局在し,高圧耐性において重要な機能を持っていることが示唆されているが,その詳細は不明である.Ego1はG2がミリストイル化,C6とC7がパルミトイル化され,それによってEGO複合体は液胞膜にアンカーできる. Ego1をパルミトイル化するゴルジ体局在型の酵素Akr1の欠損株もまた,高圧感受性を示すため,akr1Δ株におけるEgo1とEgo3の局在を調べた.その結果,Ego1の一部は液胞膜に局在していたが,Ego3は細胞質に局在していた. Ego1のC6/7S変異体がほとんど液胞膜に局在しなかったことから,akr1Δ株のEgo1はAkr1以外のパルミトイル化酵素の作用によって,液胞膜に局在していると考えられた.そこで,液胞膜に局在するパルミトイル化酵素Pfa3とAkr1の2重欠損株におけるEgo1の局在を調べた所,C6/7S変異体と類似した局在パターンを示した.つまり,akr1Δ株において,Ego1の一部は液胞膜上でパルミトイル化されるが,その場合,EGO複合体は形成されないことが明らかとなった.これらの結果は,ゴルジ体から液胞への輸送過程がEGO複合体の形成に必須であることを示している. 機能未知遺伝子の解析 高圧下での増殖に必要な機能未知遺伝子の内,MTC2,MTC6,YPR153Wの機能解析を行った.各タンパク質のC末端側にGFPを融合したタンパク質を発現させると,Mtc2は細胞質,Mtc6は細胞膜/液胞,Ypr153wは小胞体に局在した.Mtc6に関しては,N結合型糖鎖を複数持つ糖タンパク質であること,Ypr153wに関しては,その欠損株が高塩濃度に対しても感受性を示す事も見出した.これら基礎的データは,今後,各タンパク質の機能を調べていく上で有益な情報となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,akr1Δ株におけるEgo1とEgo3の局在解析の結果から,高圧耐性に必要なEGO複合体の形成メカニズムの一端を明らかにできた意義は大きい.また,研究成果では述べなかったが,EGO複合体に含まれるGtr1のGDP型をGTP型に変換するVam6の欠損もまた,高圧感受性を示す事を見出し,Gtr1のGTP型が高圧耐性に必要であることも明らかにする事ができている.また,近年の研究からEGO複合体によるTORC1の活性化が示唆されているが,圧力耐性においても,同様の経路が関与している可能性を示唆するデータも得られつつある.さらに,ypr153wΔ株の低温感受性を復帰させる挿入変異のスクリーニングを行ったところ,有益な挿入変異は取得できなかったが,挿入変異導入法の実験系は構築することができた.そのため,他の高圧感受性変異の復帰株を同様の実験系でスクリーニングすることは可能となった. 本年度は,平成26年度に予定していた機能未知遺伝子のうち,MTC2,MTC6,YPR153Wの基礎的データの取得を行った.各タンパク質の細胞内局在に加え,膜トポロジーも明らかにしつつある.これらの成果は,各機能未知遺伝子の高圧下での機能を明らかにする上で必須な情報である. 以上のように,本年度に予定していた一部の実験は行わなかったが,それと同等以上の研究結果が得られているので,達成度は概ね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
特に集中して行うべき研究は,高圧下における増殖に,TORC1がどのように関与するかを詳細に解析することである.TORC1は様々な生命現象に関わる複合体であり,その機能は酵母からヒトまで保存されている部分が多い.このTORC1が,高圧下で増殖する時に,EGO複合体依存的に活性化されることが必要であれば,真核生物における圧力ストレス応答メカニズムを明らかにする上で,重要な発見となりうる. また,Ego1とEgo3の複合体形成時に,Ego3とイノシトールリン脂質の相互作用が関係するかを明らかにするために,大腸菌で発現させたEgo3とイノシトールリン脂質との相互作用を調べるとともに,EGO複合体のそれぞれのヒトホモログをクローニングし,それらが酵母でも圧力下で同様の機能を発揮するかどうかを検討する. 機能未知遺伝子については,MTC6とYPR153Wに集中し,各タンパク質の膜トポロジーの決定と物理的に相互作用する因子の探索を優先して行う.MTC6に関しては,C末端側の細胞質領域が,高圧下でのMtc6の機能に重要であることを見出しつつあるので,そのC末端と相互作用するタンパク質をYeast two hybridシステムを用いてスクリーニングする予定である.また,Mtc6には複数のN結合型糖鎖が付加しているので,各糖鎖がMtc6の機能に与える影響についても明らかにする.YPR153Wに関しては,既に相互作用する可能性が示唆されている,小胞体に局在するFrt1との相互作用を中心に解析することで,その機能に迫っていきたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的に,オリゴDNAや遺伝子増幅酵素,制限酵素など,遺伝子組換え実験に必要な消耗品やタンパク質検出に使用する抗体の他,酵母の培養に必要なピペットやチューブなどのプラスチック製品や試薬の購入に使用する.また,本年度は酵母の高圧感受性復帰株をスクリーニングするための酵母ゲノムライブラリーやYeast two hybridで使用するライブラリーの購入にも使用する.
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