研究課題
今年度は、大腸菌において鉄還元反応に関与するフラビン還元酵素を探索し、精製酵素を用いた遊離フラビン、鉄貯蔵タンパク質との反応解析を試みた。更に、還元されたフラビンの反応解析も行った。また、大腸菌の鉄制限培養時における精製酵素の発現解析を試みた。1.大腸菌におけるフラビン還元活性を有する酵素の精製と反応解析:今年度、大腸菌の無細胞抽出液からフラビン還元活性を有する画分が6つ分画された。これらの画分は遊離フラビン存在下においてのみ鉄貯蔵タンパク質内の三価鉄を還元し、二価鉄として放出した。特にフラビン還元活性の強い2つの画分について更に精製を行い、精製標品を得た。この2つの精製酵素も遊離フラビン存在下でのみ鉄貯蔵タンパク質からの二価鉄放出反応と鉄還元反応を示した。2.還元遊離フラビンの反応解析:還元された遊離フラビンは反応性が高く、細胞内では様々な物質と反応を示すと予想される。遊離の還元フラビンを調製し、酸素や各種鉄化合物との反応を解析した。その結果、各種鉄化合物で反応速度に違いが観察され、中でもFe(III)-EDTAが最も高速に反応した。この速度は遊離フラビンと酸素との反応速度よりも速かった。3.大腸菌鉄制限培養時における精製酵素の発現解析:大腸菌を鉄十分条件、鉄制限条件で培養し、遺伝子発現解析、タンパク質発現解析を試みた。精製酵素の中でもフラビン還元活性を有し、既知の鉄還元酵素として報告済みのferredoxin NADP+ reductase (Fpr)は、鉄制限条件下でタンパク質の発現上昇が観察された。しかし、遺伝子発現解析ではFprをコードする遺伝子、それ以外の精製酵素をコードする遺伝子とも顕著な発現誘導は観察されなかった。
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FEBS Open Bio
巻: 5 ページ: p. 124―131
10.1016/j.fob.2015.01.005