本研究は高濃度セレン蓄積土壌から単離された Bacillus 属細菌の亜セレン酸還元酵素を単離同定し、その還元機構を分子レベルで解明することを目的とする。その目的達成のために以下の 4 点について研究を進めた。 1. Bacillus sp. NTP-1 株の亜セレン酸還酵素を「精製」もしくは「トランスポゾンを用いて亜セレン酸還元能欠損株を作製する」ことで同定する。2. Bacillus subtilis もしくは大腸菌による異種細胞発現系を構築する。3. 活性に関わると予想される領域に点変異を導入することで還元に関わるアミノ酸残基を特定し、亜セレン酸還元機構を分子レベルで明らかにする。4. セレン粒子形成のメカニズムを解明する。 1. および 2. に関しては、Enterococcus faecalis CG110 株を用いてトランスポゾンを当該菌に導入した結果、亜セレン酸・セレン酸還元能欠損株を複数株得た。それらの挿入部位を確認したところ、3 つの遺伝子が特定された。そのうち胞子殻タンパク質の一つである遺伝子 A に着目し、大腸菌を用いて発現させ、活性を測定したところ、本タンパクが亜セレン酸還元活性を有する事が示唆された。また、本タンパクは不溶性画分に局在している事が明らかになった。また、その他の 2 つの遺伝子については、ペプチドグリカン生合成に関わる遺伝子 B とシトクローム c オキシドリダクターゼの活性に関与する遺伝子 C であった。今後、3. を行い、還元に関わるアミノ酸残基を特定し、亜セレン酸還元機構を分子レベルで明らかにする。 4. に関しては、NTP-1 株を始め亜セレン酸還元活性を持つ菌が生産したセレンナノ粒子を菌体から分離し、粒子表面に付着しているタンパク質をESI-Qq-TOF-MS解析により複数同定した。
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