研究課題/領域番号 |
24780088
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
森 茂太郎 国立感染症研究所, 細菌第二部, 室長 (60425676)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 結核菌 / ヌクレオチド / 加リン酸分解酵素 / 抗酸菌 |
研究概要 |
本研究では、結核菌の細胞内寄生に関与していると推定される遺伝子・タンパク質(結核菌由来Rv2609c-Rv2614c)の機能と構造を明らかにすることを目的としている。本年度は、標的タンパク質のうち結核菌由来ヌクレオチド加リン酸分解酵素であるRv2613cの詳細な機能構造相関解析を行い、活性中心部位近傍に存在するループ構造が本酵素の基質特異性に大きな影響を与えていることを明らかにした。また、Rv2613cと1次構造上で高い相同性を示すMycobacterium avium由来MAV_3489、並びにM. smegmatis由来MSMEG_2932について、大腸菌内での発現系の構築と精製を行いその酵素学的諸性質を明らかにした。その結果、両タンパク質ともにヌクレオチド加リン酸分解酵素であることを示した。ゲルろ過カラムを用いた分析結果から、MAV_3489とMSMEG_2932はRv2613cと同様に特徴的な4量体構造を形成して活性を保持していることが示唆された。この特徴的な4量体構造は基質結合部位の形成に関与していることが推測されていることから、この構造的特徴を利用することによりRv2613cのみならずMAV_3489やMSMEG_2932の活性も阻害する新規化合物をデザインすることが可能であると考えられた。一方、別の標的タンパク質であるRv2609cについては、大腸菌内では可溶性画分に発現しなかったため、M. smegmatisを宿主とした発現系の構築を行い、その発現条件を検討した。さらに、結核菌のゲノム上に存在する標的遺伝子を破壊した株を作製するため、標的遺伝子をクローニングしてその遺伝子配列中に変異を挿入した、破壊株作製用プラスミドの構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標的タンパク質の1つである結核菌由来ヌクレオチド加リン酸分解酵素(Rv2613c)の詳細な構造機能相関解析に基づいて本酵素の新たな構造的特徴を明らかにするとともに、結核菌以外のMycobacterium aviumやM. smegmatis由来のヌクレオチド加リン酸分解酵素についても発現と精製を行い、その酵素学的諸性質などを明らかにした。さらに、Rv2613c以外の標的タンパク質についてもM. smegmatisを用いた発現系の構築を進めた。これらの研究で得られた成果については学術集会などにおいて発表を行った。このように、当初の目標通りに研究の大部分は順調に進展している。一方、当初の目標では本年度中に標的遺伝子を破壊した結核菌を作製する予定であったが、結核菌の生育速度が一般の細菌と比較して非常に遅いため破壊株の作製に時間がかかっており、破壊株の作製までには至らなかった。 上記の現状を考え合わせて、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、Mycobacterium smegmatis内で発現させた標的タンパク質、Rv2609cについて精製と機能解析を進めるとともに、他の標的タンパク質や、本年度新たに機能解析を行った抗酸菌由来ヌクレオチド加リン酸分解酵素について、X線結晶構造解析による立体構造の決定を進める。また、RT-PCRなどを用いて細胞内での標的遺伝子の経時的な発現量の変化について明らかにしていくとともに、標的タンパク質が結核菌内においてどの部位に発現しているのかをウエスタンブロッティング法や免疫電子顕微鏡法を用いて調べる。一方、結核菌の培養速度が著しく遅いため標的遺伝子を破壊した株の作製に時間がかかっていることから、同じ抗酸菌種であり生育速度の速いM. smegmatisを用いた破壊株作製についても検討する。得られた破壊株の感染能について、ヒトの肺胞細胞(A549細胞)や単球様細胞(U937細胞)より分化させたマクロファージ等の培養細胞、並びに感染動物モデル(モルモット)を用いて明らかにするとともに、野生株における感染能との比較を行う。これらの研究で得られた成果については、積極的に国内外の学会での発表を行うとともに英文誌への投稿も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究費についてはほぼ当初の予定通りに使用した(99.96%使用)が、小額の残金については次年度に請求する研究費と合わせて計画的に使用する(使用計画については下記の通り)。 研究の遂行に必要な試薬やプラッチクス製品などの消耗品に加えて、構造解析を行うために必須のコンピューターソフトの購入に研究費を使用する。また、国際学会と国内学会での研究成果発表を本年度は予定しているため、その旅費と参加費としても支出する。さらに、本研究課題で得られた研究成果については英文誌での発表も進めているため、発表に係る英文校正の費用や投稿料としても研究費の使用を予定している。その他、振込手数料などにも支出を行う。
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