研究課題
Ruminococcus albusが持つ二つのβ-1,4-マンノシルグルコースホスホリラーゼアイソザイム (I型とII型) の触媒残基を決定するとともに二つのアイソザイムにおける基質特異性の違いに重要なアミノ酸残基を決定した。I型酵素とII型酵素を含む類縁タンパク質のアミノ酸配列の比較を行い,I型酵素のAsp129,Glu311およびAsp341がすべての類縁タンパク質群で完全に保存されていることを確認した。これらの残基をそれぞれAsnもしくはGlnに置換した変異酵素の活性を検討したところ,D129NとD341Nにおいて大幅な活性の減少が見られた.D341Nについては,加リン酸分解,合成反応においてNaClやアジ化ナトリウムなどの添加によって活性が部分的に活性が回復したことから,基質との結合においてAsp341の側鎖の負電荷が重要な働きを持つと考えられた.このことから置換により著しい活性の低下を示したAsp129が触媒残基であると判断された.この結論はX線結晶構造解析により得られた結果と矛盾しない.I型酵素とII型酵素ではアクセプタ分子の6位水酸基に対する認識が大きく異なる.I型酵素はグルコースの6位誘導体に対して合成反応を触媒するが,II型酵素は当該基質に全く作用しない.I型酵素とII型酵素で配列を比較すると,アクセプタの6位水酸基近傍に位置する残基は,I型酵素ではIle212,II型酵素ではHis186であった.そこでI型酵素とII型酵素でこれらの残基を入れ替えた変異体を作製した.その結果,I型酵素のI212H変異体では,6-デオキシグルコースやキシロースに対する特異性が低下し,II型酵素のH186I変異体はこれらの基質をアクセプタとする合成反応を触媒した.以上のことからI型酵素のIle212は,グルコース6位誘導体に対する合成活性に重要であると考えられた.
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