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2012 年度 実施状況報告書

ピロリ菌型メナキノン生合成経路酵素群の立体構造解析及び反応機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 24780097
研究種目

若手研究(B)

研究機関信州大学

研究代表者

新井 亮一  信州大学, 繊維学部, 助教 (50344023)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード酵素化学 / X線結晶構造解析 / メナキノン / 生合成 / 構造生物学 / ピロリ菌 / 高度好熱菌 / 反応機構
研究概要

近年、放線菌や高度好熱菌において従来知られていなかったメナキノン(ビタミンK2)生合成経路が新たに発見された。この新規メナキノン生合成経路を持つ微生物の中には、病原菌であるHelicobacter pyloriやCampylobacter jejuni等が含まれ、ヒトや乳酸菌等の共生微生物はこの経路を持たない。そのため、新規メナキノン生合成経路にある酵素群は、病原菌に特異的な阻害剤開発のターゲットになりうると考えられる。そこで、本研究では新規メナキノン生合成経路に関わる酵素の反応機構解明を目的として、まず、今年度は、高度好熱菌由来 MqnD-生成物・生成物類似体複合体およびピロリ菌由来プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)の立体構造解析を行った。
MqnD-生成物・生成物類似体共結晶構造では、生成物・生成物類似体が大小2つのドメイン間のポケット部位に結合し、アミノ酸側鎖や主鎖と生成物のカルボキシ基酸素原子との間で水素結合を形成していた。また、生成物と疎水結合を形成しているアミノ酸残基も見出された。また、他種間でも高度に保存されており、活性中心の触媒残基や反応中間体の安定化に寄与している可能性のある残基も見出された。さらに、この結果を受けて、MqnD-基質共結晶作成に向けて、MqnD活性部位変異体の作製と結晶化検討を行った。
一方、ピロリ菌由来PNPの結晶構造は、α/β構造を持つ分子が6量体を形成し、高さ60オングストローム、直径100オングストロームの円盤型の全体構造をとっていた。各モノマーは10本のβシートの周りに7本のαへリックスが位置する構造を持ち、交互に上下反転した向きで6量体に会合していることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度、高度好熱菌由来 MqnD-生成物・生成物類似体複合体だけでなく、ピロリ菌由来プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)の立体構造解析にも成功しており、おおむね順調に研究は進展している。また、MqnD-基質共結晶作成に向けて、MqnD活性部位変異体の作製と結晶化検討も既に行っており、さらに、これまで入手困難だったMqnDの基質を最近入手することができており、次年度以降の研究発展に向けた準備状況も良好である。

今後の研究の推進方策

まず、MqnDの酵素反応機構の詳細を解明するために、高度好熱菌MqnDと基質との共結晶を作成し、X線結晶構造解析により立体構造を解明する。基質については、市販されていないので、これまで入手が非常に困難であったが、最近、共同研究を通して入手することができた。また、基質が反応しないで結合した状態を保つため、MqnDの予想活性残基変異体も既に作成し、結晶化条件も検討済みである。このMqnD変異体結晶に基質をソーキングすることにより基質複合体結晶を作成して立体構造解析を行い、基質認識機構や活性残基の立体配置を明らかとする。さらに、基質結合部位や活性部位残基の各種変異体を作成し、酵素反応速度解析等の生化学実験を行い、MqnDの酵素反応機構の詳細を解明する。
また一方、ピロリ菌由来PNPと基質や生成物との複合体の立体構造解析も行い、本酵素の反応機構の詳細を解明する。
さらに、MqnDの反応機構解析の成果を抗菌剤開発に応用するため、ピロリ菌由来MqnDの結晶化及びX線結晶構造解析を行う。さらに、得られたピロリ菌MqnDの立体構造を利用して、in silico阻害剤結合スクリーニングを行い、structure-based drug discoveryやfragment-based drug discoveryの手法等も利用し、抗菌剤リード化合物探索への応用を目指していく。

次年度の研究費の使用計画

前年度は研究費の効率的な使用に努め、コストパフォーマンスの高い研究成果を得ることができた。そこで、次年度以降に集中的に研究費を投入して、比較的高価な機器や試薬なども使用しながら、研究進展をさらに加速するような研究費の使用を計画している。これにより、限られた研究費を研究期間全体に渡って効率的に使用することになり、費用対効果を最大限に高めた研究成果を得ることができると考えられる。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Domain-swapped dimeric structure of a stable and functional de novo 4-helix bundle protein, WA202012

    • 著者名/発表者名
      Arai, R., Kobayashi, N., Kimura, A., Sato, T., Matsuo, K., Wang, A.F., Platt, J.M., Bradley, L.H. and Hecht, M.H.
    • 雑誌名

      J. Phys. Chem. B

      巻: 116 ページ: 6789-6797

    • DOI

      10.1021/jp212438h

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Solution structure of IseA, an inhibitor protein of DL-endopeptidases from Bacillus subtilis, reveals a novel fold with a characteristic inhibitory loop2012

    • 著者名/発表者名
      Arai, R., Fukui, S., Kobayashi, N. and Sekiguchi, J.
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 287 ページ: 44736-44748

    • DOI

      10.1074/jbc.M112.414763

    • 査読あり
  • [学会発表] 小林直也、福井貞晴、新井亮一、関口順一2013

    • 著者名/発表者名
      枯草菌細胞壁溶解酵素阻害タンパク質IseAの立体構造解析:特徴的な阻害ループを持つ“弓鋸型”新奇構造の解明
    • 学会等名
      第13回日本蛋白質科学会年会
    • 発表場所
      とりぎん文化会館(鳥取)
    • 年月日
      20130612-20130614
  • [学会発表] 新規人工設計タンパク質WA20のドメインスワップ二量体構造及びそのタンデム化応用2012

    • 著者名/発表者名
      小林直也, Michael H. Hecht, 新井亮一
    • 学会等名
      「細胞を創る」研究会 5.0
    • 発表場所
      東京工業大学(横浜)
    • 年月日
      20121121-20121122
  • [学会発表] ドメインスワップ新規人工タンパク質WA20 のタンデム化とその特性

    • 著者名/発表者名
      小林直也, Michael H. Hecht, 新井亮一
    • 学会等名
      第12回日本蛋白質科学会年会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(名古屋)
  • [学会発表] 枯草菌細胞壁溶解酵素阻害タンパク質IseAの立体構造解析:特徴的な阻害ループを持つ弓鋸型新奇 構造の解明

    • 著者名/発表者名
      福井貞晴、新井亮一、小林直也、関口順一
    • 学会等名
      第50回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      名古屋大学(名古屋)
  • [学会発表] 枯草菌細胞壁溶解酵素阻害タンパク質IseAの立体構造解析:特徴的な阻害ループを持つ弓鋸型新奇 構造の解明

    • 著者名/発表者名
      新井亮一、福井貞晴、小林直也、関口順一
    • 学会等名
      第64回日本生物工会大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場(神戸)
  • [学会発表] Domain-Swapped Dimeric Structure of a Stable and Functional De Novo Four-Helix Bundle Protein WA20, and its Potential Application

    • 著者名/発表者名
      Arai, R., Kobayashi, N., Kimura, A., Sato, T. and Hecht, M. H.
    • 学会等名
      The 18th Symposium of Young Asian Biochemical Engineers' Community (YABEC2012)
    • 発表場所
      徳島大学(徳島)
  • [学会発表] 新規メナキノン生合成経路酵素MqnDの生成物・類似体複合体のX線結晶構造解析

    • 著者名/発表者名
      松尾 京子, 石北 央, 大利 徹, 新井 亮一
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      東北大学(仙台)
  • [学会発表] Arai, R., Matsuo, K. and Dairi, T.

    • 著者名/発表者名
      Crystal structures of MqnD, a menaquinone biosynthetic enzyme, complexed with the product, 1,4-dihydroxy-6-naphthoate, and its analogs
    • 学会等名
      4th International Symposium on Diffraction Structural Biology (ISDSB 2013)
    • 発表場所
      名古屋市中小企業振興会館(名古屋)
  • [備考] 信州大学繊維学部 研究成果プレスリリース

    • URL

      http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/news/2012/12/50284.html

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公開日: 2014-07-24  

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