研究課題
哺乳類におけるアスパラギン酸ラセマーゼとして報告されたGot1L1が、真に哺乳類のD-Asp合成酵素であるかを検証した。Got1L1ノックアウトマウスの作出と組織中D-アスパラギン酸量の定量、また、リコンビナントタンパク質の調整とそのin vitroにおける酵素活性を検証した。その結果、Got1L1ノックアウトマウスの海馬や精巣におけるD-アスパラギン酸レベルは野生型酵素と、ほぼ同レベルであることが判明した。さらに、調整したリコンビナントタンパク質が、報告されたようなアスパラギン酸ラセマーゼ活性を有さないことが明らかとなった。以上の結果、少なくともGot1L1が哺乳類における主要なD-アスパラギン酸合成酵素ではないことを明らかとした。また、D-アミノ酸経口投与の腸内細菌層への影響についても検証した。腸内細菌叢は発ガンや生活習慣病などヒトの健康状態との関与が示唆されており、加齢や食餌成分によって変動することが報告されている。D-アスパラギン酸またはD-セリン混合餌を投与し、マウス糞便からDNAを抽出し、リアルタイムPCR法、DGGE法で解析した。D-アスパラギン酸が全バクテリア数に対するFirmicutes門バクテリア比率を減少させることや、Bacteroidetes門バクテリア比率を増加させる可能性を見いだした。特に、Clostridium属細菌やLactobacillus属バクテリアを減少させる傾向が認められた。
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