研究課題/領域番号 |
24780100
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥 公秀 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10511230)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | オートファジー / 脂肪滴 / ミトコンドリア |
研究概要 |
異種タンパク質生産に広く使われる C1酵母(Pichia pastoris)および出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae) を対象に、それぞれ自身の持つオートファジー関連タンパク質のひとつ Atg8 を、単独または脂肪滴(lipid droplet)局在タンパク質との融合タンパク質として発現させた。 両酵母においてAtg8タンパク質の発現レベルを上昇させるほど脂肪滴が肥大化することを見出し、Atg8タンパク質の過剰発現が酵母の脂質蓄積能の増大に寄与することを明確にした。また、脂肪滴局在型 Atg8の発現は、Atg8タンパク質単独の発現よりも効率的に脂肪滴の肥大化を促進することを見出した。 出芽酵母において、Atg8タンパク質が持つヘミフュージョン活性に必要とされるアミノ酸残基に変異を導入すると脂肪滴肥大化の効果が著しく抑制されることを見出した。このことから、Atg8タンパク質のヘミフュージョン活性はオートファジーだけでなく、脂肪滴の肥大化という機能を担っていることを初めて明らかにした。 C1酵母のメタノール代謝時におけるミトコンドリア動態とオートファジーとの関係を明らかにするため、Pichia pastoris のミトコンドリア外膜タンパク質およびマトリクスタンパク質に蛍光タンパク質を付加した融合タンパク質を発現させ、その量およびサイズ変化によりミトコンドリアに対するオートファジー(分解)活性を調べた。結果、一部の外膜タンパク質の分解は見られたものの、マトリクスタンパク質の分解は顕著には見られず、ミトコンドリア全体に対するオートファジー活性は低いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題において、Atg8タンパク質が脂肪滴形態に影響を与える現象を、C1酵母である Pichia pastoris に関しても見出すことができたため、出芽酵母における先行研究で得られたAtg8に関連するより詳細な分子機構に関する知見を、C1酵母研究にも活用できるめどが立ったことは重要な進展である。 また、C1酵母のメタノール培養時において、ミトコンドリアに対するオートファジー(マイトファジー)の誘導は見られなかったものの、本オルガネラの外膜タンパク質の分解は観察されたことから、オートファジー以外のタンパク質分解系路の誘導が示唆されたことは興味深い。
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今後の研究の推進方策 |
オートファジー関与タンパク質の脂肪滴動態に対する機能の解析については、脂肪滴内の脂質を分解する機構であるリポリシスを考慮する必要がある。そこでリポリシス不全変異とオートファジー関与タンパク質の欠損変異との二重変異が、脂肪滴の形態や細胞内中性脂質量に及ぼす影響を調べることで、それらの関係性を調べていく予定である。 また、脂肪滴の形態形成とともにそのオルガネラ単位での分解様式であるリポファジーについても、その機能解析に取り組んでいく。具体的には、リポファジーの誘導の有無を生化学的にアッセイする手法の確立から研究を進めていく。 ミトコンドリアに対するオートファジー活性を調べる過程で、その外膜タンパク質のオートファジー非依存的な分解を見出したことから、オートファジーと並ぶもう一つの主要な細胞内タンパク質分解系路である、ユビキチン・プロテアソーム経路がC1酵母のメタノール培養時のミトコンドリア動態に関与するのかどうかを調べていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度と同様に、オートファジー関与タンパク質および脂肪滴局在タンパク質の生化学的解析に要する、DNA、タンパク質操作実験のための消耗品購入を研究費の主な使途として予定している。 また、脂肪滴の微細形態の把握のために、電子顕微鏡解析が必要となっており、そのための経費も必要となる。 本年度に酵母のオルガネラを主要トピックとする国際会議30th INTERNATIONAL SPECIALISED SYMPOSIUM ON YEASTがスロバキアで開催されるが、これは本研究課題と密接に関連したものであるため、本シンポジウムで研究発表および討論を行うことを予定しており、そのための旅費を申請する予定である。
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