本年度(最終年度)はC1酵母のひとつPichia pastorisのオートファジー関連機能タンパク質Atg18 およびAtg21の機能解析に関して大きな進展が見られた。具体的には、本酵母Atg18が様々な生理条件の変化(浸透圧の変化、炭素源の変換、酸化ストレス)に応じてリン酸化・脱リン酸化されることを見いだし、そのリン酸化部位を同定した。このリン酸化によりAtg18がイノシトールリン脂質の1つ、フォスファチジルイノシトール3,5―2リン酸への結合能を低下させることで、液胞形態の制御に機能することを見いだした。また、Atg21が別のイノシトールリン脂質フォスファチジルイノシトール3リン酸への結合を介して、オートファジー新生膜の合成に機能することも見出した。 前年度の実績と合わせると、出芽酵母およびC1酵母におけるオートファジー関連タンパク質のうち、特にAtg8、Atg18、Atg21が持つオルガネラ形態制御メカニズムについての理解を進めることができた。すなわち、Atg8は液胞および脂肪滴の、Atg18は液胞形態の制御に機能することを見出した。これらの知見は脂肪滴に蓄積する油脂の生産性改善に資するものと考えられる。
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