研究課題/領域番号 |
24780109
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
野村 崇人 宇都宮大学, 雑草科学研究センター, 准教授 (60373346)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ステロイド / シロイヌナズナ / 生合成 / 性分化 / 雌雄異株 |
研究概要 |
植物から動物ステロイドが検出されるが、植物におけるその生合成経路と生理機能は明らかにされていない。本研究では、(1)変異体による逆遺伝学的研究手法を用いて植物における動物ステロイドの生合成経路(生合成酵素)の解明を行っている。さらに、(2)動物ステロイドの植物における生理機能、特に性分化(雌雄分化)における役割の解明を試みている。本年度は、(1)の研究として、強心配糖体を生産する植物のジギタリスにおけるプレグネノロンからプロゲステロンへの合成酵素遺伝子3β-HSDに類似したシロイヌナズナの遺伝子の解析を進めた。T-DNAが挿入されたシロイヌナズナの変異体を取得し、ホモの変異体を単離して、現在、各種カラムクロマトグラフィーにより動物ステロイドの精製を進めている。また、動物の酵素遺伝子との系統樹から推測した動物ステロイド生合成酵素の他の候補遺伝子についてもT-DNA挿入変異体を複数取得してホモ変異体の単離を進めた。遺伝子によっては類似性から機能が重複していると考えられるものもあったので、交配により二重突然変異体の作出を進めた(2)の研究としては、雄花と雌花が別々の個体につく雌雄異株植物の内生動物ステロイドの分析を進めた。雌雄異株植物であるホウレンソウを雄株と雌株に分けるためにPCRを用いて雌雄鑑定を行ったのち、それらの動物ステロイドの分析を行った。このとき、生殖生長と栄養条件の関係も調べるために、貧栄養や過剰栄養条件で育てた材料を分析したが栄養条件による動物ステロイド生産への影響は認められなかった。また、今回の生育条件では動物ステロイドの生産量は低く、雌雄における動物ステロイド含量の差異を確認することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画どおりに進捗しているが、共同研究者であるハンガリーの生物学研究所のSzekeres博士が十分な研究費を獲得できなかったことから、当初予定していたRNAi法による候補遺伝子の低発現株の作出は断念せざるをえなかった。しかしながら、候補遺伝子に関しては、すでに10種類以上のT-DNA挿入変異体を得ているので、それらの分析により期待しうる十分な結果が得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおりに進める。(1)の研究に関しては、シロイヌナズナのT-DNA挿入変異体の内生動物ステロイドについてLC-MS/MSやGC-MSを用いた機器分析を進める。また、候補酵素タンパク質を大腸菌等で発現させて、基質ステロイドを代謝させ、その機能解析を行う。(2)の研究に関しては、雌雄異株植物であるアスパラガスの雄株と雌株の内生動物ステロイド分析を行う。また、果実や花、茎葉などの器官別に内生動物ステロイドの分析も行う。これらの研究により、植物における動物ステロイドの生合成酵素の同定および性分化との関連性の解明に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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