申請者は抗マラリア剤、抗がん剤などの新たな医薬として期待されるペルオキシド化合物群の新規合成法の確立を目指し、okundoperoxideの合成研究に取り組んできた。 昨年度の研究においては、左側ユニットをα-イオノンから、右側ユニットをD-マンニトールから合成し、Juliaカップリングを用いて両者を結合させ、okundoperoxideの全炭素骨格を構築した。 本年度はその結果を踏まえ、okundoperoxideの光学活性体合成に着手した。まず、ゲラニルアセテートを出発物質とし、シャープレスの不斉ジヒドロキシ化を用いて不斉を導入した。そこから14工程の変換を行い、左側ユニットとなるスルホンを調製した。これとD-マンニトールより調製した右側ユニットをJuliaカップリングを用いて結合させた。生成物のE/Z比は約1:1であったが、アセトニドを除去すると両者は分離可能となり、両者を用いて鍵反応である一重項酸素との[4+2]環化付加反応を行った。その結果、どちらの異性体からも反応は進行し、ジオール部分のエポキシ化と続く酸処理を行うことでokundoperoxideの不斉全合成を達成することができた。この際、両異性体から目的物が得られたことから、アリルエポキシドの開環はSN2'反応ではなく、アリルカチオン経由であるという新たな知見も得られた。今後は、機器分析に必要な十分量の試料を合成し、絶対立体配置の決定を行いたいと考えている。
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