研究課題
アポトーシスの初動反応では、ミトコンドリアに局在するシトクロムc(cytc)とカルジオリピン(CL)との特異的な複合体(cytc-CL複合体)の形成と解離が鍵反応となって、細胞質へのcytcの漏出を制御している。本研究では種々のCL類縁体および光反応性CLプローブを有機合成し、これらを用いて詳細なCLの結合部位を同定することを目的とした。平成24年度の計画は、主に有機合成を重点的に推進することとした。これまでに、予定していたCL酸化体の合成を完了し、現在は生理機能解析に向けた大量合成に着手している。また、光反応性CLの合成も2種類について終了している。光反応性CLについては分子間相互作用解析にも前倒しで着手しており、リポソーム共沈殿法による評価から合成した光反応性CLがcytcと高い親和性を持つことを確認している。さらに、光親和性標識実験も行なっており、cytc(horse haert)との標識反応が得られていることを確認した。今後は、研究計画に従いさらに合成CL類縁体の充実を進めると共に、分子間相互作用解析を進めることで目的とするCL-cytc複合体の分子メカニズムを明らかにする予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
計画していたCL類縁体の有機合成は順調に遂行できており、酸化側鎖を有するCLの合成を完了するなど今後の生理機能解析に向けた準備は整ってきている。同時進行する光反応性CLの合成は既に十分な量と純度を確保しており、前倒しで分子間相互作用解析に着手できている。光反応性CLを用いた光親和性標識実験の結果は、当初の狙い通り、cytcとの高い親和性に由来する標識反応を示していた。このことから、継続となる今年度においても当初計画通りに作用機構研究を進めることができる。これらの成果についてドイツ・フライブルクで行われた第17回ヨーロッパ生体エネルギー会議でのポスター発表がオーラルにセレクトされる幸運に恵まれた。以上のように、研究の目的であるCL-cytc複合体のメカニズムを解明するための準備は当初の計画以上に進展したと考えている。今後は、平成25年度計画に従ってCL-cytc複合体のメカニズム解析を遂行する予定である。
当初計画に従い、CL類縁体のバリエーションを充実するとともに、光反応性CLを用いたCL-cytc複合体のメカニズム解析を遂行する。CL類縁体についてはCL-cytc複合体形成に由来するペルオキシダーゼ活性の誘導を評価するとともにリポソーム共沈法による親和性の評価を行うことでCL-cytc複合体形成および乖離におけるメカニズム解析を行う予定となっている。光反応性CLを用いた光親和性標識実験については、既に着手しており、所望の標識反応が確認できた。今後はさらに詳細な結合部位の同定を目指し、各種電気泳動やMS解析などを精力的に進める予定となっている。
CLの有機合成についての幾つかの改良が奏功したため、基金化の恩恵もあり当該年度の予算を繰り越すことができた。CL-cytcの相互作用解析については特に光親和性標識実験におけるcytcの精製などにおいて多様な手法が知られている。繰越分により、次年度はこれらについての条件検討が精力的に行うことができる。研究計画全体としての使用計画は変わることはないが、上記のように当該年度に非常に順調に推移した分の繰越に関しては、計画目標の実現を目指して使用する。また、2013年6月にアメリカ・ニューハンプシャー州で行われるゴードン研究会議(生体エネルギー)への発表参加申請が受理されたことから、予定の研究計画に加えて本会議への出席と発表を行うことを計画している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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