研究課題
【背景と目的】カルジオリピン(CL)は2つのリン酸基と3つのグリセロール部からなる親水性頭部と4つの脂肪鎖を持つリン脂質であり、ミトコンドリア内膜に特異的に見られる。CLは種々の呼吸鎖酵素やミトコンドリアトランスポーターの活性発現に必須の成分であり、また、細胞のアポトーシス誘導に関してはシトクロムC(Cyt c)との複合体形成を通じて酸化ストレス応答に重要な役割を果たすことが指摘されてきた。そこで、本研究ではCL分子に関する有機化学的なアプローチによってCL-Cyt c複合体の分子機構を解明することを目的とした。【結果】CLの構造改変による構造活性相関研究として、CLの脂肪酸部に水酸基を位置選択的に導入した一連の酸化CL類縁体を合成した。これらについてCyt cとの複合体形成によるペルオキシダーゼ活性の誘導を評価したところ、そのどれもが対照となる水酸基を持たないCLに比べて高い誘導活性を示した。従って、CLの脂肪酸部にはある程度の極性が許容されることが初めて明らかになった。このことは、従来の研究においてCLは脂肪酸部の過酸化によって"高い疎水性"を失うことで複合体の解離を誘導すると考えられてきたことに一石を投じる結果となった。さらに、これらの結果を踏まえて、光反応性官能基ジアジリンを導入した光反応性CLを開発した。光反応性CLを用いた光親和性標識実験により、Cyt cを特異的に標識できることがわかり、今後の結合部位の同定に有用であることが示された。
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