研究課題/領域番号 |
24780114
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
野下 浩二 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (40423008)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ニトリル / 生合成 / アミノ酸代謝 / 昆虫食害 / ジャスモン酸 / 誘導抵抗反応 |
研究概要 |
昆虫食害でオオイタドリとマツヨイグサから植物誘導抵抗反応としては珍しいニトリル化合物が生成・放出されることを発見し,まずニトリル生合成経路の解明に取り組んだ.マメコガネ食害でフェニルアセトニトリルを放出するオオイタドリでは,フェニルアセトニトリルが L-フェニルアラニンから生合成されること,またニトリル生合成の原料となる L-フェニルアラニンも昆虫食害により誘導されることを明らかにした.非天然型の D-フェニルアラニンはニトリルへと代謝されにくく,オオイタドリにおけるニトリル生合成は立体選択的な反応を含むと考えられる.現在,これら成果を論文にまとめ投稿中である.一方,ハムシ食害によりイソバレロニトリルを放出するマツヨイグサでは,イソバレロニトリルがロイシンから生合成されること,その生合成中間体としてアルドキシムの存在を,重水素標識したロイシンの取り込み実験から明らかにした.また,ハムシ食害を受けたマツヨイグサにはハムシを捕食する天敵カメムシがよく見られる.この天敵カメムシがイソバレロニトリルに対して強い選好性を示し,天敵カメムシが餌探索に食害を受けた植物のにおいを利用していることを明らかにした. 昆虫食害によるニトリル放出が植物ホルモンであるジャスモン酸メチル (MeJA) で再現されることを利用して,マツヨイグサ葉中で MeJA 処理により特異的に誘導されるタンパク質の解析を行い,ニトリル生合成に関わる酵素の探索を行った.結果,MeJA 処理によりマツヨイグサ葉中で複数の膜結合型タンパク質が誘導されることを見出した.これら誘導タンパク質の詳細な構造解析を現在進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物ニトリル生合成経路の解明に関しては,論文として成果をまとめることができるところまで来ており,順調に研究が進んでいると判断する.すなわち,現在,オオイタドリのニトリル生合成経路に関して投稿中の論文が 1 報ある.また,マツヨイグサのニトリル生合成経路に関しても,平成 25 年度内の投稿に向けて,投稿論文の準備を進めている. 一方,ニトリル生合成に関わる酵素の特定に関しては,MeJA を利用してその候補となるタンパク質を複数見出し,スクリーニングの段階は既に達成している.平成 25 年度以降は,今回見出したタンパク質に絞って研究を進めることができるため,研究は順調に進んでいると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
マツヨイグサ葉中で,MeJA 処理により特異的に誘導されるタンパク質を複数見出し,これらの中に,ニトリル生合成に関わる酵素が含まれると考えられる.そこで,平成 25 年度は,これらニトリル生合成の候補タンパク質の構造解析を MALDI-TOF/TOF-MS を用いて進める.また,これら酵素の活性評価を行うことを目的に,MeJA 特異的に発現する酵素タンパク質の精製を進める予定である. また,オオイタドリのニトリル生合成においては,フェニルアラニンが脱炭酸して生じたフェネチルアミンが検出されることから,フェニルアラニン脱炭酸酵素の関与が予想できる.そこで,平成 25 年度は,オオイタドリ葉中からのフェニルアラニン脱炭酸酵素の同定を試みる. 既に明らかにしているマツヨイグサが放出するイソバレロニトリルの生合成経路に関しては,投稿論文の準備を進め,平成 25 年度中の投稿を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
酵素タンパク質の精製に強力なツールとなる液体クロマトグラフィーシステムの購入を計画している.また,MALDI-TOF/TOF-MS によるタンパク質の構造解析に必要な試薬類など研究推進に必要な消耗品の購入を予定している.さらに,成果発表に掛かる費用として,学会発表のための旅費ならび論文投稿に必要な英文校正に本研究費を使用する予定である.
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