接合菌Mortierella alpinaの細胞中にはエンドバクテリアが存在する。この接合菌と細菌の相互関係(共生)確立にはアシルホモセリンラクトン(AHL)を介したクオラムセンシング(QS)が重要な役割を担っていることが示唆されている。本申請課題では、このユニークな共生を成立・維持する上でのQSの機能と、その分子メカニズムの解明への基盤構築を目指している。平成25年の課題はエンドバクテリアのAHL生合成遺伝子のクローニングであった。研究分野の進展に伴い、他の接合菌類中にもエンドバクテリアが存在することが報告された。それらの中で、エンドバクテリアが単離・純粋培養できる系を用いてエンドバクテリア純粋培養に向けた実験系構築を行い、Mortierella alpinaからのエンドバクテリア単離を検討した。現在までに成功はしていない。また、AHL生合成酵素阻害剤をリガンドとしたプルダウンアッセイによるAHL生合成酵素の同定法の開発も進めた。本プロダウン法により、いくつかの種の細菌からAHL合成酵素が精製できることが確認されつつある。AHL合成酵素同定に向けた基盤はかなり整備されたと考えている。
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