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2013 年度 実施状況報告書

植物の光感受性を制御する新規ホルモン様物質の探索

研究課題

研究課題/領域番号 24780117
研究機関東北大学

研究代表者

瀬戸 義哉  東北大学, 生命科学研究科, 助教 (40620282)

キーワード光感受性 / D14LIKE / カリキン / ストリゴラクトン
研究概要

本研究は、植物の光感受性に関わる新規ホルモンを同定することを目標としている。具体的には我々が以前の研究で明らかにしてきている植物の枝分かれ制御ホルモンであるストリゴラクトン(以下SL)の受容体であるD14遺伝子と相同性の高い遺伝子であるD14LIKEに着目し、そのリガンドとなるべき物質の同定を目指している。新規ホルモンの同定に向けて、本ホルモンの生合成変異体を入手することが必要であるという考えのもと、d14likeと酷似した表現型を示す変異体のスクリーニングを行った。その結果、d14like自身ではないものの、表現型はd14likeと酷似した変異体を少なくとも5種類獲得することが出来た。本変異体については、引き続きカリキンを投与することで表現型が相補できるかを調べることにより、新規ホルモンの生合成に関与する遺伝子の変異体であるかの絞り込みを進めている。
胚軸の伸長抑制活性や発芽促進活性については、カリキンのみならず、SLも同様の作用を有していることが明らかとなってきた。つまり、D14経路だけでなくD14LIKEの経路でもSLがホルモンとして作用する可能性が考えられた。この可能性を追求するために、SLの4種立体異性体を用いて、胚軸伸長抑制に対するSLの立体特異性を調べた。SLがD14経路を介して枝分かれを制御する際には、4種異性体のうち2’位の絶対立体配置がR型の2種類のみが強い活性を示すことが明らかとなっている。4種異性体をD14が機能し得るd14like変異体に投与したところ、同様の傾向が見られた。一方でD14LIKEが機能し得る、d14変異体に投与した際にはいずれのSLも同等の作用を示すことが分かった。すなわちSLがD14LIKE経路で作用する際には、立体特異性がないことが明らかとなり、D14LIKE経路における真のリガンドがSL自身ではない可能性が高いと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

D14とD14LIKEはその立体構造が酷似していることからも、リガンドの化学構造も似ていると予想されている。すなわちD14LIKEの経路には、ある特定のSLの分子種が機能しているのではないかといった可能性も提唱されている。加えて、SL自身が胚軸伸長抑制活性を示したことは、本可能性を支持するものであった。しかし、SLの各種異性体がd14の胚軸伸長抑制に関して同等の活性を示したことは、D14LIKE経路でSLが作用する際には立体特異性が無いことを示しており、D14LIKEがSLの部分構造を認識している可能性や、SLの代謝産物もしくは分解物を認識している可能性なども考えられる。すなわち、SL自身が真のリガンドではないことを強く示唆しており、本経路で働く新規ホルモン様物質の解明に向けて、重要な知見をもたらしたと考えている。
d14likeと表現型の酷似した変異体のスクリーニングは当初の予定より、進行が遅れているものの着実に前進しており、今後は獲得した変異体の詳細な解析を進めていく予定である。
以上のように、真のリガンドを同定するまでには更なる実験を必要とするものの、新規ホルモンの同定に向けて着実に前進していると考えている。

今後の研究の推進方策

現在までに獲得した、d14likeと酷似した表現型を示す変異体については、引き続き解析を進め、新規ホルモンの生合成欠損変異体であるか否かの解析を進める。生合成変異体と思われるものについては、本変異体の表現型を相補する化合物の探索に着手する。d14like変異体では、真のリガンドとなるべき化合物が蓄積している可能性が高いため、d14like変異体の抽出物を用いて、活性を指標に分画していきたいと考えている。また、SLの立体異性体がD14LIKE経路においてはいずれも同等の活性を示したことを考慮すると、それらに共通する部分構造であるSLのD環、すなわちメチルブテノライド骨格が活性に重要なパーツであると予想される。この構造はカリキンにも共通する部分構造であることから、D14LIKE経路の真のホルモン様物質も同様の部分構造を有している可能性が高いと考えている。我々のグループでは新規SL類縁体を探す一つの手法として、LC-MS/MSを用いてメチルブテノライドを有する化合物を網羅的に解析するということを行ってきている。D14LIKE経路のホルモンが同様の手法にて見出せる可能性も考えられるため、d14likeで内生量が増加し、獲得される生合成変異体には存在しないという指標をもとに、分析化学的な手法での探索も試みたいと考えている。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Carlactone is an endogenous biosynthetic precursor for strigolactones2014

    • 著者名/発表者名
      Yoshiya Seto, Aika Sado, Kei Asami, Atsushi Hanada, Mikihisa Umehara, Kohki Akiyama, Shinjiro Yamaguchi
    • 雑誌名

      Proc Natl Sci USA

      巻: 111 ページ: 1640-1645

    • DOI

      1314805111

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ストリゴラクトンの多様な生理作用と生合成2013

    • 著者名/発表者名
      山田雄介、梅原三貴久、瀬戸義哉
    • 雑誌名

      植物の生長調節

      巻: 48 ページ: 148-153

  • [学会発表] ストリゴラクトンの生合成と動態2014

    • 著者名/発表者名
      瀬戸義哉
    • 学会等名
      日本育種学会第125回講演会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20140321-20140322
    • 招待講演
  • [学会発表] 安定同位体標識カーラクトンを用いたシロイヌナズナにおけるストリゴラクトンの生合成研究2014

    • 著者名/発表者名
      浅見慶、瀬戸義哉、花田篤志、佐渡愛香、秋山康紀、山口信次郎
    • 学会等名
      第55回日本植物生理学会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      20140318-20140320
  • [学会発表] シロイヌナズナのロゼット葉におけるストリゴラクトンの生理作用2013

    • 著者名/発表者名
      森本優、東大野むつみ、瀬戸義哉、桧垣匠、馳澤盛一郎、山口信次郎
    • 学会等名
      植物化学調節学会第48回大会
    • 発表場所
      新潟
    • 年月日
      20131031-20131101

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公開日: 2015-05-28  

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