研究課題
食中毒原因来を含めた細菌はストレス下でViable But Non-Culturable (VBNC)状態に陥ることが知られている。VBNC状態の細菌は通常生育しうる培地で増殖せず、しかし、生理活性を維持している。VBNC状態の細菌は病原性を保持し、宿主腸管内などで増殖を再開し、病原性を発現するため、食品衛生上重要な問題である。ゆえに、VBNC状態の細菌の検出法の開発が求められる。しかし、VBNC状態の分子メカニズムに関する知見は乏しい状態である。VBNC状態の細菌は培地中で増殖できないので、細胞周期があるステップでアレストしている可能性が考えられる。一方、RpfはVBNC状態のサルモネラを蘇生させることから、Rpfが細胞周期にどのように作用しているのか明らかにすることで、VBNC状態の分子メカニズムとRpfの作用機構の解明を目指した。細菌の細胞分裂リング構成タンパク質であるFtsZに着目した。細胞分裂時、FtsZは分裂面にZリングと呼ばれるFtsZからなるリング構造を形成する。分裂後はZリングは脱重合し、次の分裂時には再びFtsZが重合し、Zリングが形成される。抗FtsZ抗体を用いたウェスタンブロットの結果から、VBNC状態と対数増殖期では、細胞内FtsZ量に違いは見られなかった。このことから、VBNC状態ではFtsZの発現が減少するために分裂ができなくなるのではないことが示唆された。また、ほとんどの食中毒病原体の増殖できるFPE培地のVBNC状態のサルモネラに対する蘇生効果も検証した。FPE培地にVBNC状態のサルモネラを接種し、37℃で7日間培養し、BHI培地でCFUを調べた。定常期のサルモネラは培養後1日でBHI培地で検出されたが、一方、VBNC状態のサルモネラは7日間の培養後でも検出できなかった。このことから、FPE培地単独ではVBNCサルモネラを蘇生させることができないことが分かった。VBNC細菌を検出するには、蘇生因子を添加するなど改良を加える必要があるかもしれない。
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Biomedical Research International
巻: Vol. 2013、Article ID 205801
10.1155/2013/205801
Res Microbiol
巻: 164 ページ: 335-341
10.1016/j.resmic.2013.01.011