研究課題
研究代表者は、イネ種子から歯周病菌Porphyromonas gingivalisの増殖を阻害する2種類のタンパク質成分OsHsp70N (Hsp70ホモログ)とAmyI-1 (α-アミラーゼ)を過去に見出している。本年度は、X線結晶構造解析によりAmyI-1の立体構造を決定し、得られた構造生物学的知見などに基づいて、AmyI-1のP. gingivalisに対する増殖阻害活性の発現に関わるメカニズムの解明を進めた。前年度までに、Polyethylene glycol 3350を沈殿剤として含む条件において、AmyI-1の結晶の調製法を確立している。この結晶を使用して、大型放射光施設(つくば市)において放射光を利用した回折実験を行い、AmyI-1の立体構造を2.2オングストローム分解能で決定した。AmyI-1はα-アミラーゼに典型的な(β/α)8-バレル構造を有していた。また、立体構造既知のα-アミラーゼとの構造比較から、2つの糖鎖結合領域が立体構造的に高度に保存されていることがわかった。また、Biacoreを用いた分子相互作用解析により、AmyI-1はグラム陰性菌の細胞壁外膜を構成するリポ多糖(Lipopolysaccharide, LPS)と相互作用することを明らかにし、細菌に対する結合能力を有する可能性を示した。一方で、培地中にAmyI-1と可溶性デンプンが共存する場合にのみ、P. gingivalisの増殖が阻害されることを見出した。また、AmyI-1を用いてあらかじめ可溶性デンプンを糖化した溶液を培地中に添加した場合においても、P. gingivalisの増殖が阻害された。推定される触媒残基Asp-178をAlaに置換して糖化活性を喪失させた変異体を用いると増殖は阻害されなかったことから、AmyI-1によるデンプンの分解物がこの増殖阻害に対して直接的に関与していることが示唆された。市販のデンプン分解物を培地中に添加してもP. gingivalisの増殖は阻害されなかったため、AmyI-1と可溶性デンプンの分解物が協奏的に作用してP. gingivalisの増殖阻害に関与していることが示唆された。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
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10.1080/09168451.2014.917261