研究課題/領域番号 |
24780124
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
稲垣 瑞穂 岐阜大学, 応用生物科学部, 研究員 (50626356)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | ラクトフォリン / ヒトロタウイルス / 糖鎖 |
研究概要 |
申請者らはこれまでに、牛乳の加熱耐性タンパク質の一つであるラクトフォリン(18 kDa lactophorin, LP18)が、乳幼児下痢症の主因であるヒトロタウイルス感染に対し、極めて強力な阻害活性を示すことを見出した。興味深いことに、その阻害は、LP18とウイルスの直接的な結合による阻害ではなく、LP18と宿主細胞側のレセプター様分子との相互作用による阻害であることが示唆されている。申請者らは、LP18の示すユニークな感染阻害メカニズムの解明を目指し、本研究では、少なくとも4つで構成されるLP18分子種の特徴付けを目標に掲げた。 定法に従い、牛乳からプロテオースペプトンを調製後、尿素存在下のヘパリンアフィニティークロマトグラフィーに供することでLP18を精製した。35S-Met/Cysを用いてヒトロタウイルス感染細胞内でのウイルスタンパク質合成の経時的追跡とその合成に与えるLP18の影響について検討した。本来なら、感染細胞内では、感染7時間後を境にウイルスタンパク質の合成が盛んになるのであるが、感染前の細胞にLP18を添加することでウイルスタンパク質の合成を抑制することを見出した。また免疫染色法を用いてLP18の細胞局在性について検討したところ、4°Cと37°Cの条件下においてLP18の染色像が異なっていたことから、LP18は宿主細胞内に取り込まれることが示唆された。このLP18の取り込みは、LP18分子構造内の77位N型糖鎖を除去すると見られなくなる。以上の結果から、LP18は、N型糖鎖を介して宿主細胞内に取り込まれることでウイルスの複製およびアセンブリを抑制する可能性が指摘された。 LP18の分子種の単離は、二次元電気泳動後のゲルからタンパク質溶出することで分取しており、今後、活性を検討する。O型糖鎖の分析も継続して実施中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画(LP18分子種の特徴付け)に照らすと、少し遅れている点もある。しかしながら、RIでの検討および細胞免疫染色の検討から、そのLP18のヒトロタウイルス感染阻害様式は、宿主細胞内に取り込まれてウイルス感染から防御するという、今までに報告されたことのない全く新しい感染防御のスタイルのようであることが浮き彫りにされつつある。当初の計画と多少離れた検討も行っているが、全体として、当初の計画以上に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
クロマトグラフィー手法を用いた分子種の単離は、牛乳から精製されるLP18の量が非常に微量であるため、様々な分離条件での検討できずに困難を極めている。その代案として、二次元電気泳動後のゲルからのタンパク質溶出で分取する予定である。 ウイルスは宿主細胞に侵入後、①脱殻、②転写、③複製、④アセンブリ、⑤出芽の順を経て子孫ウイルスを残す。本年度の結果から、複製を抑えていることが明らかとなっている。次年度は②転写に与えるLP18の影響を検討項目に加えていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究は、岐阜大学大学院連合農学研究科へ移動して実施する。施設の移動に伴い、設備の購入(電気泳動関連、免疫染色用抗体、RI備品など)が必要となる。また研究打ち合わせや学会での研究成果を発表するために出張経費、論文投稿の際の諸経費を予定している。
|