研究課題/領域番号 |
24780129
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
川井 清司 広島大学, 生物圏科学研究科, 講師 (00454140)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 澱粉 / 融解 / ガラス転移 / 食品加工 |
研究概要 |
本研究の目的は、低水分系澱粉含有食品を結晶質と非晶質とが混在した半結晶質複合材料として捉え、原料の加熱過程における物理的性状変化を制御することで、品質を維持しつつ機能性を付与する高付加価値化加工操作を明らかにすることである。一年目は低水分系澱粉含有食品の代表としてクッキーを想定したモデル試料を用い、試料の成分が澱粉の融解温度に及ぼす影響について系統的に調べた。 薄力粉、砂糖、無塩バター、全卵を様々な割合で混合し、成型することで、一定形状の試料を得た。更にこれを減圧乾燥することで、試料の水分含量を調節した。各試料の水分含有量は常圧乾燥法によって調べた。また、澱粉の融解温度は示差走査熱量測定及び偏光顕微鏡観察によって調べた。 試料の水分含有量は減圧処理時間の増加と共に低下した。示差走査熱量測定において、試料に含まれる各成分の融解による複数の吸熱ピークが検出された。偏光顕微鏡観察を併用することで、最も高温に位置するピークが澱粉の融解ピークに相当することを明らかにした。この融解ピークの開始点から融解温度を決定し、水分含有量に対してプロットすることで、澱粉の融解曲線を得た。以上の結果を整理し、試料の水分含有量及び砂糖含有量が少ないほど、澱粉の融点は高くなることを明らかにした。今後は更に、油脂(無塩バター)の含有量が澱粉の融解温度に及ぼす影響について調べ、澱粉の融解温度の予測について検討する。 一方、二年目以降に行う予定であった研究の一部(焼成条件が食感、消化抵抗性澱粉含量、マウスにおける食後血糖値の上昇に及ぼす影響)を前倒しで進めることができた。その結果、減圧乾燥によって水分含量が低下することで澱粉の融解温度が上昇し、焼成過程において澱粉が融解を免れた結果、消化抵抗性澱粉含量が増加すること、マウスにおける食後血糖値のピーク値が有意に低下すること、などが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的は、試料の原料成分が澱粉(結晶質アミロペクチン)の融解温度に及ぼす影響について系統的に調べることであった。測定装置の都合により、この目的を完全に達成することはできなかったが、二年目以降に行う予定であった研究の一部(焼成条件が食感、消化抵抗性澱粉含量、食後血糖値の上昇に及ぼす影響)を前倒しで進めることができた。当初の予定に若干の変更はあったが、全体としては概ね計画通りに進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
二年目は、油脂(バター)の含有量が澱粉の融解温度に及ぼす影響について明らかにし、一年目に得られた結果と併せて、澱粉(結晶質アミロペクチン)の融解温度の予測について検討する。また、当初の計画にしたがい、試料成分や加熱条件がガラス転移温度、軟化温度、破断特性に及ぼす影響を明らかにすると共に、必要に応じて試料の消化抵抗性澱粉含量及び食後血糖値の上昇抑制効果を調べ、澱粉の融解挙動や他成分との相互作用との関連について検討する。得られた成果の学会発表および論文投稿を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
融解温度やガラス転移温度を調べるための示差走査熱量計測定では比較的高額な耐圧パンやドライアイスを用いる。また、消化抵抗性澱粉含量の測定では比較的高額な酵素試薬を用いる。試料の軟化温度及び破断測定には研究室既設のレオメーターを用いるが、試料形状を考慮した装置の改良が必要と判断される。その設計のために、ヒーターなどの材料を必要とする。これらを物品費として使用する。 食後血糖値の上昇抑制効果は動物実験によって調べる必要があるが、これについては測定を委託する。また、得られた成果は速やかに学術論文として発表する。これらのためにその他の費用を必要とする。 旅費は成果発表および情報収集のために利用する。
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