凍結時に形成する氷晶は,溶質成分や分散質を排斥し,凍結濃縮相と呼ばれる高濃度空間を形成する.この凍結濃縮相内部における分散質の濃度上昇やゲル化剤の濃度上昇を誘起させることで,ゲル形成,複合体形成,タンパク質凝集などを進行させ,これを種々の特性を有するナノ・マイクロカプセルを作り分ける技術として利用することを目指す研究を実施した.特に,単一の化学組成を持つ原料から,特性(消化性,生体取り込み能,物質放出能)の異なる微粒子が作製可能であることの実証に重点を置いた.研究期間内に実施した研究課題として,①凍結を経て作製したカゼイン凝集ナノ粒子の評価と疎水性相互作用を利用したβカロテンのカプセル化,②ゼラチン-アカシアガムの複合コアセルベートを利用して作製した油滴内包型コアシェルナノ粒子の特性評価,③キトサン,κ–カラギーナン,カルボキシメチルセルロース複合クライオゲルを利用して作製した油滴内包型コアシェルナノ粒子の特性評価,を挙げられる.それぞれのケースについて,カプセル化率,内包物質の放出速度,貯蔵安定性などの観点から作製したナノ・マイクロカプセルの特性を評価し,凍結プロセスを経ることでこれらの特性がどのように変化するかを検討した.その結果,凍結を経ることでカプセル化率が向上するケース,内包物質の初期バーストの低減や放出速度の遅延が実現できるケースなどを見出した.本研究から得られた成果により,本研究にて提案する凍結を利用したマイクロカプセル作製という手法が冷却速度の変更によってカプセルの種々の特性をチューニング可能な技術であることを明らかにした.
|