研究課題/領域番号 |
24780133
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中西 裕美子 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 研究員 (10614274)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / プレバイオティクス / メタボローム / 腸内フローラ |
研究概要 |
平成24年度は、Wild type Balb/cマウスを用いて、ラフィノース効果についての、腸内環境に及ぼす影響について調べた。Wild type Balb/cマウスに、5%ラフィノース食を摂させ腸内環境がどのくらいの時間スケールで変化するのか、基本情報を得るとともに、解析手法についても検討した。 Balb/cマウスに5%ラフィノース食を1週間摂取させ、経時的に糞便を採取した。採取した糞便を用いて腸内フローラ解析とメタボローム解析を行った。腸内フローラ解析は次世代シーケンサー(GS Junior)を用いて網羅的16SrDNA解析を行い、メタボローム解析はキャピラリー電気泳動質量分析装置(CE-MS)を用いて糞便中のイオン性代謝物の分析と液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-MS)により糖代謝物の分析を行った。腸内フローラ解析の結果、ラフィノース摂食1週間後では、Clostrididales目菌が減少し、Bacteroidale目菌や善玉菌であるBifidobacterium属菌が増加した。また、ラフィノース摂食後、糞中ではアミノ酸が増加し、有機酸が減少していた。ラフィノース摂食マウスは通常食摂食マウスと比較し、腸管組織も厚く、腸内の栄養状態が良いことが示唆され、ラフィノース摂食によるBacteroidale目菌やBifidobacterium属菌の増加と腸内の代謝物の変化が腸内環境を改善し、腸内の栄養状態を改善していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、腸内フローラネットワークを構築するモデルとして、Wild typeのBalb/cマウスにラフィノース摂食試験を行い、次世代シーケンサーを用いた腸内フローラ解析と、CE-MSとLC-MSを用いたメタボローム解析の実験法と解析法の基盤を構築できた。得られた腸内フローラと代謝物データから時系列での腸内細菌数と代謝物濃度の増減の相関を計算し、代謝物と腸内細菌の関連性を予測する腸内フローラネットワーク法を構築するところは現在、種々の統計解析法により検討を行っているところであり、おおむね計画通りに進んでいる。 今回の結果から得られた基本情報として、ラフィノース摂食群と通常食群の比較により、ラフィノース摂食マウスでは糞便中のアミノ酸量が増加することが分かった。また、ラフィノース摂食によりどのくらいの日数でラフィノースを資化できるように変化するかを調べたところ、ラフィノース摂食後、5日ほどで糞便中から検出されるラフィノースがほぼ検出限界以下であったことから、約5日でラフィノースを資化できる腸内フローラへと変化していることが示唆された。しかし、アレルギー抑制効果については8週間のラフィノース摂食が必要であるため、今後の試験で、Wild typeのマウスについても8週間ラフィノース投与し、比較する実験を次年度に追加する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は前年度に構築した解析法を用いて、食物アレルギーアレルギーモデルマウスの腸内環境の解析を行う。 卵アレルゲンである卵白アルブミン(OVA) に特異的なT 細胞レセプター(TCR)を発現するトランスジェニック(OVA-TCR-Tg)マウスは、OVA摂食により即時性食物アレルギーが誘発されるが、ラフィノースを摂食するとアレルギーが抑制される。そこで、OVA-TCR-Tgマウスに通常食、5%ラフィノース食、通常食+OVA、5%ラフィノース食+OVAをそれぞれ摂食させ、各マウスの糞便、血液、尿を経時的に採取し、腸内フローラと代謝物を解析する。また、Wild typeマウスもコントロールとして同じ実験群での解析を行う。 ①OVA摂食によりアレルギーが発症するとマウスは下痢を引き起こすため、11週齢にて解剖し、下痢による腸管組織の炎症をスコア化し、アレルギー症状の評価を行う。また、経時的に血液を採取し、血清IgEとIL-4をELISAにより計測する。血清IgE値が低下していればアレルギーが抑制されているため、ラフィノース摂食によるアレルギー抑制の評価を行う。また、血清中のIL-4値から免疫系がアレルギーを発症しやすいTh2型に動いているか、またはそれが抑制されるTh1型に動いているかを調べる。 ②糞便、血液、尿のメタボローム解析と、糞便からDNAを抽出し、次世代シーケンサーを使用し腸内フローラ解析を行う。また、変動の大きい腸内細菌についてはReal-time PCR法により、定量的に腸内細菌の変動を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する研究費が生じた理由 平成24年度で残額が生じたが、その理由として、年度末に生じた学会発表の旅費等の支払い・清算手続きが平成25年4月以降になるため、平成25年3月31日時点では翌年度に使用する研究費が生じているが、平成25年4月以降に行う支払い・精算に使用する予定である。また、その他の費用として実験サンプルの運搬費を計上したが、サンプル輸送は自身で行ったため運搬費はかからなかった。印刷費、複写費、論文の英文校閲費について計上していたが、研究の進捗程度から、論文での成果報告は次年度になる予定であるため、それらの費用は次年度に使用する。 翌年度以降に請求する研究費(平成25年3月に提出した支払請求書の金額)とあわせた使用計画 次年度は消耗品として、実験動物と実験動物の維持管理費、餌等の費用として200千円、メタボローム解析と腸内フローラ解析のための試薬、消耗品として900千円、血清IgEとIL-4を定量するためのELISA試薬と消耗品として200千円を予定している。旅費について、研究協力者との打ち合わせ、国内学会、国際学会の発表の旅費として350千円予定している。その他の経費として、学会参加費、サンプル運搬費等を50千円予定している。
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