研究課題/領域番号 |
24780133
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中西 裕美子 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 研究員 (10614274)
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キーワード | 腸内細菌 / メタボローム / プレバイオティクス |
研究概要 |
当該年度は、Balb/cマウスに5%ラフィノース食を摂食させたマウスのメタボローム解析を詳細に行った。また、糞便中の有機酸を定量するためのGC-MSの分析法を確立し、糞便中、及び、血中胆汁酸を測定するためのLC-MSの分析法を作製した。 Balb/cマウスに5%ラフィノース食を1週間摂取させ、経時的に糞便を採取し、腸内フローラ解析とメタボローム解析を行った結果、ラフィノース摂食1週間後では、Clostrididales目菌が減少し、Bacteroidale目菌や善玉菌であるBifidobacterium属菌が増加した。ラフィノース摂食後、糞中ではラフィノースの分解と共に、アスパラギン酸やグルタミン代謝に関連する代謝物が増加し、中心代謝系の代謝物が減少する傾向が見られ、ラフィノース摂食5日目にはプレバイオティクスを資化できる腸内環境に変化していることを明らかにした。ラフィノース摂食マウスは通常食摂食マウスと比較し、腸管組織も厚く、ラフィノース摂食により腸内の栄養状態を改善していることが示唆された。また、プレバイオティクス効果として、Bifidobacterium属菌の増加が認められた個体では、アスパラギン酸、グルタミン酸、乳酸、タウリンの増加がみられた。特に糞便中の乳酸はラフィノース摂食前と比較し摂食後は7倍も高い濃度であった。ビフィズス菌は乳酸を多量に産生するため、乳酸の増加はBifidobacterium属菌の増加に関連している可能性がある。また、乳酸は腸管上皮細胞のエネルギー源として利用されるため、ラフィノース摂食群の腸管組織の肥厚は乳酸に起因する可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度はOVA-TCR-Tgマウスのメタボローム解析、腸内フローラ解析、血中IgEの測定を行う予定であったが、OVA-TCR-Tgマウスの動物試験が遅れている。当研究所では動物実験施設がないため、平成24年度は山形大学の協力を得て動物試験を実施していたが、自身で動物試験を行うために、現在、慶應義塾大学の動物施設にて動物試験を行う準備を進めている。当該年度は、腸内フローラとメタボロームの統合解析としてネットワーク解析を検討し、解析法を確立した。また、現在のCE-MSを使用したメタボロームの分析法は、腸内細菌の重要な代謝産物である有機酸が数種類測定できないため、GC-MSを使用した有機酸の定量法をまず確立した。また、脂質代謝をコントロールする胆汁酸の代謝にも腸内細菌が関わることから、胆汁酸を定量するためにLC-MSを使った分析法も確立した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年5月には動物試験を開始できる状況にあるため、平成26年度は遅れていたOVA-TCR-Tgマウスの動物試験、メタボローム解析、腸内フローラ解析、及び、血中IgEの測定を行う。また、wild typeマウスの解析から、ラフィノース摂食5日目にはプレバイオティクスを資化できる腸内環境に変化していることから、ラフィノース摂食5日目までの腸内フローラデータを新たに解析し、腸内フローラデータとメタボロームデータのタイムポイントを増やし、詳細な腸内フローラネットワーク解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に予定していた動物試験が遅れているため、消耗品、試薬などは次年度の動物試験と解析の費用として使用する。 次年度は当該年度に予定していた動物試験、メタボローム解析と腸内フローラ解析を行うために繰り越し分の約580千円は消耗品の費用として使用する。
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