平成26年度は5%ラフィノース食を摂食させたBalb/cマウスの糞便を用いて、ラフィノース摂食後0~7日目までの腸内フローラデータを次世代シーケンサーにより網羅的に解析した。その結果、ラフィノース摂食群5個体中4個体でBifidobacterium属の細菌(ビフィズス菌)の増殖が観察されたが一度増殖してもまた減少する傾向にあり、その結果、5個体中2個体でビフィズス菌が7日目まで増殖し続ける(定着する)ことが分かった。ビフィズス菌が定着しない個体ではBacteroidaceae科の細菌、Ruminococcaceae科の細菌が増殖しており、これらの細菌はラフィノースの資化性が高く、ビフィズス菌定着の妨げになる事が予測された。前年度までのメタボローム解析の結果から、ビフィズス菌が定着した個体ではラフィノースの分解と共に糞便中の乳酸、アスパラギン酸やグルタミン酸が増加し、シトルリン、クレアチニン、クレアチンなどの窒素代謝の代謝物が減少することがわかった。ビフィズス菌は乳酸を多量に産生するため、乳酸の増加はビフィズス菌の増加に起因すると考えられる。ラフィノース摂食マウスは通常食摂食マウスと比較し腸管組織が厚く、腸管も長いことから腸内の栄養状態が改善しているが、これは腸内細菌が産生した乳酸が腸管上皮細胞のエネルギー源として利用されるため、ビフィズス菌の定着が栄養状態の改善に寄与している可能性がある。しかし、今回のメタボローム解析の結果から、ラフィノース摂食により糞便中の乳酸だけではなくアミノ酸の増加が顕著に確認されており、アミノ酸の蓄積が腸管内における栄養状態の改善やプロバイオティクス効果にも関与する可能性がある。今後はOVAアレルギーモデルマウスを使用し、ビフィズス菌の定着の有無によるアレルギー症状との関連性、また、メタボロームデータを含めた腸内環境との関連性について調べていく予定である。
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