研究課題/領域番号 |
24780147
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
加藤 正吾 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (20324288)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | つる植物 / イワガラミ / ツルアジサイ / 付着根型 / 光環境 / 匍匐シュート / 登攀シュート / 支持ホスト |
研究概要 |
イワガラミの登攀シュートについて、実験室内で光屈性の実験を行った。人工光下で14時間日長により、デジタルカメラを用いて、21日間のインターバル撮影(5分間隔)により写真解析を行った。明期と暗期のそれぞれの上方移動への貢献割合を求めたところ、いずれのシュートにおいても、すべての個体で暗期に65%以上の値を示した。登攀シュートが主に夜に上方へ伸長していることが明らかとなった。この過程は匍匐シュートで知られている屈性反応に類似しており、イワガラミのシュートは上方伸長過程においても、明期と暗期で周期的な正と負の光屈性を行っていると考えられた。なお、野外においても、テイカカズラにおいて同様の現象が観察された。 さらに、イワガラミの匍匐シュートについて、実験室内で光屈性の実験を行った。登攀シュート同様の実験であるが、日長や光強度を変えて行った。これまで知られている周期的な匍匐シュートの光屈性と異なる現象が観察された。 一方、野外調査では、トドマツ人工林の林床の光環境を1m間隔で測定し、支持ホスト候補木については、0m、1m、3mについて、光環境を測定した。測定にはオプトリーフを用い、申請者による既存のキャリブレーション式により、積算光量子束密度の値に換算した。支持ホストへの登攀するシュートと光環境の関係を解析したところ、より低い地上高では、イワガラミよりツルアジサイがより明るい場所に分布していたのに対して、高い地上高では、その差異は消失した。支持ホスト上での、イワガラミとツルアジサイの分布の差異は、林床での分布の差異にもとづくことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室内実験においては、匍匐シュートでは、これまで知られている周期的な光屈性と異なる現象が観察され、次年度以降のさらなる探求すべき生物現象を発見した。また、登攀シュートの伸長様式は知られていなかったが、主に暗期に上方へ伸長するという生物現象を発見した。これらの伸長様式の発見は、付着根型つる植物の空間獲得戦略を明らかにする上で、重要な知見を得た。 野外調査においては、支持ホストへの登攀するシュートは、より低い地上高では、イワガラミよりツルアジサイがより明るい場所に分布していたのに対して、高い地上高では、その差異は消失したことを明らかにした。次年度以降、さらに、つる植物の分布と樹幹表面の光環境を精密に測定する必要があるが、イワガラミとツルアジサイの分布の差異が、林床での分布の差異にもとづくことを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
室内実験においては、匍匐シュートの光屈性は、周期的な匍匐シュートの光屈性と異なる現象が観察まで至ったが、その仕組みついては未解明なため、どのような条件でそれが発現するのか、光強度と日長の組み合わせを増やし、詳細な検討を加える。 室内実験においては、明期と暗期の周期的な伸長様式について、暗期の伸長する方向に特徴があるため、その伸長方向を検証するための実験モデルを検討し、研究を実施する。 また、野外実験においては、林床のイワガラミとツルアジサイの分布をより詳細に調査し、研究計画になかった側方からの光環境との対応関係についても、新たに明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
野外でのつる植物の樹幹表面での光環境を正確に把握するため、側方からの光の入射も考慮した光環境の測定を行う。次年度の計画を実行した上で、研究計画になかった新たな測定を行うための球形水中光量子センサー(LI-193SA, 304,500円)の購入に予算を充当する必要があるため。
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