研究課題/領域番号 |
24780147
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
加藤 正吾 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20324288)
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キーワード | イワガラミ / ツルアジサイ / 光環境 / 負の光屈性 / 付着根型つる植物 / 匍匐シュート / 支持ホスト |
研究概要 |
イワガラミの匍匐シュートについて、実験室内で光屈性の実験を行った。人工光下(60μmol/㎡/s、90μmol/㎡/s)で、14時間日長(14日間)と、24時間連続照射実験(7日間)を行った。デジタルカメラによるインターバル撮影によって、シュート先端の座標を記録した。60μmol/㎡/sの条件下、90μmol/㎡/sの条件下とも、14時間日長では、明期中に負の光屈性を示す傾向にあった。24時間連続照射でも負の光屈性は示したものの、14時間日長に比べて負の移動距離は小さかった。イワガラミの匍匐シュートの負の光屈性には、明期と暗期の両方が必要であることが示唆された。 また、イワガラミの登攀シュートについて、負の重力屈性と光屈性の関係を明らかにする予備的実験を行った。登攀シュートに対して、斜め上方から光を照射する条件下で、同様にインターバル撮影により調査を行った。登攀シュートでは、匍匐シュートでみられる負の光屈性が減衰することで、シュートが登攀していることが示唆された。 一方、野外調査における解析では、平成25年度に測定を行ったトドマツ人工林の林床における光環境と支持ホスト候補木の樹幹上の光環境を詳細に解析したところ、林床ではイワガラミよりツルアジサイの方が、より明るい場所に分布していたが、地上高が高いところでは、両種の光環境に対する分布の差異は、認められなかった。支持ホスト上のイワガラミとツルアジサイの分布の差異は、林床での分布の差異にもとづくことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室内実験においては、匍匐シュートの周期的な負の光屈性が、明期の光合成の結果として生じているのではなく、暗期によってより屈曲が促進されているという、非常に重要な生理的反応を発見した。また、登攀シュートにおける実験おいて、屈性反応の予備的実験より、匍匐シュートでみられた負の光屈性が消失することが登攀に必要な生理反応であることが示唆される結果を得た。 野外調査においては、林床での光環境を詳細に再解析することで、イワガラミとツルアジサイの分布の差異について明らかにし、樹幹上での分布の差異の消失を確認し、ほぼ調査を終了した。 以上から、付着根型つる植物の光屈性と空間獲得戦略について、順調に明らかになっているものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
室内実験において、匍匐シュートで明らかとなった負の光屈性における暗期の重要性に関連して、登攀シュートでの光と重力に対する屈性反応の明期と暗期の関係について、詳細に検討する。 登攀シュートにおける付着根の発生や支持体とシュートの摩擦が、どのように登攀や屈性に影響しているのかについて不明な点が多いため、高湿度条件下で登攀シュートから付着根を発生させ、自然条件に近い登攀シュートとなるような新たな実験系において、登攀シュートの屈性を明らかにする。 また、匍匐シュートの伸長している部位と、伸長しない部位の両方が、負の光屈性に関係しているデータが得られているが、いずれの部位が負の光屈性に大きく貢献しているか明かになっていない。匍匐シュートにマーキングし、伸長部位と屈性の関係を詳細に明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
一部、実験用に栽培した植物の生育が不良であったため、実験光源や栽培資材の購入を控えたため。 最終年度に、不足分の実験データを得るために、実験光源や栽培資材の購入を行い、予定どおり使用する予定である。
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