研究課題/領域番号 |
24780151
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
谷口 武士 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 助教 (10524275)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 共生微生物 / 菌根菌 / 窒素固定 / 浸透圧調節 / 乾燥ストレス / 養分吸収 |
研究概要 |
本年度は、アメリカの調査地で、4月、10月、3月の3回のサンプリングを行った。11種の植物の葉、および9種類の植物の根を採集した。乾燥地で生育する植物の適応性として、葉を落とす植物もあり、すべての植物の葉を全てのサンプリング時に採取することはできなかった。しかしながら、葉を常に維持している植物と、ストレス時には葉を落とす植物との間で浸透圧調節に大きな違いがあることが予想される。植物根は深度10~20 cmに集中しており、この土壌深度が植物の養分吸収に重要であることが確認された。極乾燥地にあたる調査サイトでは、根が非常にまばらであるため、サンプリングは非常に困難であるが、約1か月滞在して共同研究者とサンプリングを行い、9種の植物根を採取することができた。これらの植物に関する情報は非常に少なく、このデータは高い価値を有すると思われる。土壌中の植物に利用可能な窒素量を把握するため、硝酸態窒素とアンモニア態窒素をそれぞれの樹種の林冠下土壌を用いて測定した。窒素固定を行っている、Indigo bush(Psorothamnus schottii)、Acacia(Acacia greggii)の樹冠下で硝酸態窒素量が多い傾向が認められた。これらの植物の根粒は地下数メートルに形成されるため、先の根系サンプリング時には根粒を観察できなかったが、土壌養分の分析からは窒素固定植物に特徴的な養分利用が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
季節変化に関する植物のサンプリングは、当初2回を予定していた。しかしながら、実際、野外で調査を進める中で、調査地における植物の葉の落葉などのフェノロジーが著しいことが分かり、これに合わせてより細かいサンプリングを行う必要性が出てきた。現在、3回のサンプリングが終了しており、さらに2回のサンプリングを予定している。これに伴い、サンプル回収が終了する時期、および化学分析が終了する時期が遅れている。また、共生微生物のDNA分析については、所属機関に次世代シーケンサーが導入されたため、機械のセットアップなどに時間を要している。上記の遅れは、データの精度向上のために必要な遅れであり、本申請研究は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、共生微生物の違いによる植物の養分吸収、そしてこの養分吸収の違いによる植物の浸透圧調節に注目し、乾燥地で生育する植物の乾燥ストレス耐性戦略を明らかにすることである。この目的を達成するため、①植物の共生微生物タイプ(アーバスキュラー菌根菌、窒素固定細菌、内生菌、内生細菌)、養分吸収、浸透圧調節物質の季節パターンの把握、②夏の降雨に対する共生微生物、養分吸収、浸透圧調節物質の反応性、③室内実験による共生微生物タイプと浸透圧調節物質と乾燥ストレス耐性の関係、の3点を明らかにすることを目指している。①については、2012年4月、10月、3月のサンプリングが終了した。次年度は乾燥が最も厳しい6月、そして夏の降雨が見られる8月にサンプリングを行う。②については、次年度の6月、環境ストレスへの反応性の高いEncelia farinosaと反応性の低いLarrea tridentataを対象に、野外で水を与える操作実験を行う。この試験のサンプリングは、短期間に様々なサンプリングを行う必要があるため、調査補助を依頼する予定である。③については、実験を行う対象植物(Encelia farinosa)の種子集めと日本への持ち込み申請等を進める。次年度の分析については、葉の浸透圧調節物質、同位体分析、リンと窒素の定量などの化学分析を中心に進める。共生微生物に関するDNA解析は、化学分析と並行して予備試験を行う。当初の計画よりも野外サンプルの数が増えたため、微生物解析については、次世代シーケンサーを用いた解析を行う。化学分析については、新しく導入されたプレートリーダーを用いることで、時間短縮を図る。次年度得られた成果から、植物の共生微生物とストレス耐性メカニズムに関する仮説を立て、次々年度の室内実験に備える。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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