研究課題/領域番号 |
24780151
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
谷口 武士 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 助教 (10524275)
|
キーワード | 共生微生物 / 菌根菌 / 窒素固定 / 浸透圧調節 / 乾燥ストレス / アンモニア酸化細菌 / 光合成速度 / 土壌呼吸 |
研究概要 |
本年度は、前年度に調査することができなかった、降雨に対する植物、および土壌微生物の反応に関する調査を行った。調査地のBoyd Canyonにおいて優占する2樹種(Encelia farinosa、およびLarrea tridentata)に着目し、約12.5 mmの降雨を想定した水処理を行った。土壌呼吸を測定した結果、土壌呼吸は半日後にはピークを迎え、その後、急激に減少するパルス様の反応を示した。この反応は土壌微生物の活性が一時的に、かつ急激に高まったことを示している。植物の光合成速度は水処理から4~7日後に上昇し、植物の反応は土壌微生物よりも遅いが、比較的速やかに反応していることが分かった。光合成に必要な窒素の供給源である土壌窒素については、Larrea tridentataでは明瞭な変化が認められなかったが、Encelia farinosaでは水処理から4日後に硝酸態窒素の増加が認められ、アンモニア酸化細菌の活性に変化があったのではないかと推察された。今後は菌根菌、窒素固定細菌、アンモニア酸化細菌などに関する解析を進め、どのようなタイミングでどの微生物の反応が見られ、このような変化は植物の降雨後の反応に関与しているのかを明らかにする。また、Encelia farinosaについては本年度も昨年度同様の葉と根系のサンプリングを継続した。このサンプルを解析することで、年間を通しての植物生理の変化と共生微生物との関係に関する知見を得ることができると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請研究では、①植物の共生微生物タイプ(アーバスキュラー菌根菌、窒素固定細菌、内生菌、内生細菌)、養分吸収、浸透圧調節物質の季節パターンの把握、②夏の降雨に対する共生微生物、養分吸収、浸透圧調節物質の反応性、③室内実験による共生微生物タイプと浸透圧調節物質と乾燥ストレス耐性の関係、の3点を明らかにすることを目指している。①、および②については昨年度までにサンプリングが終了し、①の浸透圧調節物質である糖類と糖アルコールに関する解析、および土壌窒素に関する解析は終了した。②については、葉の量が少なかったため、浸透圧調節物質を解析するためのサンプルを採取することができなかったが、植物のストレス耐性や活性を評価する指標として、光合成速度を調査した。炭素同位体比を測定するための少量の葉はサンプルを採取しており、解析結果を光合成のデータと照合して植物の反応と活性を評価する予定である。土壌養分については、窒素動態に関するデータは解析済みである。①と②について共通で残っている解析は共生微生物相についてであるが、これについては予備試験を実施しており、今後、本試験を行う予定である。また、③については、有用な共生微生物の探索に関する研究が遅れており、当初予定していた形での実験が厳しい状況にあるため、実験設定の変更を踏まえた方策が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
共生微生物に関する解析については、次世代シーケンサーを用いた解析を行う。現在、予備試験の段階にあるが、一度メソッドが確立すれば、解析は速やかに進むと思われる。また、効率的に解析を進めるため、細菌と古細菌を一度に増幅するプライマー、および菌根菌とその他の菌類を一度に増幅するプライマーを使用する。現在、これらのプライマーでのDNA増幅は良好であり、予備試験の結果を踏まえて本試験に進む予定である。また、同位体解析については、研究補助を依頼することで、解析を速やかに進める。③室内実験による共生微生物タイプと浸透圧調節物質と乾燥ストレス耐性の関係については、灌木であるEncelia farinosaを用いると植物の成長に時間を要することが予想されるため、草本植物を用いたモデル系での実験に予定を変更して行う。
|