研究課題/領域番号 |
24780153
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
笠原 玉青 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10622037)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 河川間隙水域 / 細粒土砂 |
研究概要 |
生息場や産卵床の提供など、河川生態系内で様々な役割を持つとして注目を集めている河川間隙水域であるが、本研究においては、土砂の堆積による時間的・空間的に変動を把握することを目的として調査を行っている。 河川間隙水域は地下に位置するため、目に見えない。したがって、流路内の環境が河川間隙水域のインジケーターとして使えることは、間隙水域の保全を将来的に河川管理に加えていく上でとても有用である。平成24年度においては、流路内環境と間隙水域の細粒土砂の関係を重視し、調査を行った。 調査地は、降雨時に細粒土砂の流出が多く見られる渓流に、勾配の異なる2区間を設けた。調査地の流路環境(河川勾配の変化や流速、水深)を観測すると共に、土砂環境の調査を行った。複数のピエゾメターを設置し、間隙水の細粒土砂濃度を平水・高水時に測ると共に、河床の土砂堆積量を調査した。 出水前後を比較すると、間隙水の細粒土砂濃度は出水後に高い。また、直前の出水だけではなく、累積降雨量との関係がみられた。これらの結果より、出水時に、流路を流れる浮遊土砂が間隙水に進入していて、出水が間隙水域の細粒土砂濃度に大きく影響していることがわかった。 流路の環境と間隙水域の細粒土砂濃度を比較したところ、河床勾配の違いにより、細粒土砂濃度と関係が見られる環境因子が異なることが示唆された。具体的には、勾配が緩く瀬淵構造の見られる区間においては、動水勾配が細粒土砂濃度と比較的強い関係を持ち、勾配がきつくカスケード地形をもつ区間においては河床に堆積する土砂量の変化と単位縦断面積流量が細粒土砂濃度と関係を持つことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は以下の2つの目的に基づき、調査を行った。①河川間隙水域の目詰まりの進行・軽減の周期を明らかにする-出水時の浮遊土砂濃度を測定する.ピエゾメターや土砂サンプルを使い、間隙水域の細粒土砂量を調査する.②目詰まりを起こす細粒土砂の特性を明らかにする-間隙水域の細粒土砂を採取し、有機物含有量などを測定する. 前者の目的に対しては、出水時の細粒土砂の間隙水域への浸入が明らかにされたため、出水の有無とその頻度が目詰まりの進行に影響していることがわかってきた。また、細粒土砂の浸入が河川勾配、又は河川地形の違いにより異なることが分かった。しかし、目詰まりの軽減のプロセスに関してはまだ分かっていないので、さらなる調査が必要である。また、ピエゾメターによる透水性の測定を行ったが、Slugテストでは推定が難しかった。細粒土砂濃度と透水係数との関係の調査を進め、目詰まりの評価を行う必要がある。 後者の目的に対しては、間隙水域の細粒土砂の採取は行ったので、サンプルの処理を継続して行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は平成24年度に引き続き、目詰まりの進行・軽減の周期を明らかにする、また細粒土砂の特性を明らかにすることを目的に調査を行う。特に、昨年度の課題として残る目詰まりの軽減プロセス、細粒土砂濃度・特性と透水性との関係に重視する。目詰まりの軽減は、出水のサイズにより起こったり、平水時に徐々に細粒土砂が洗い流されることが考えられる。したがって、昨年度観測した出水のサイズの幅を広げるように出水時の観測を増やすと共に、平水時にも注目して調査を行う。また、透水性の変化の推定においては、ピエゾメター以外の方法を取り入れる。例えば、土砂をつめた管を河床に埋め、その土砂管の透水係数の変化を測定することを考慮している。細粒土砂の特性、特に有機物の割合や有機物のタイプは重要なパラメーターである。分解されやすい有機物であるならば、有機物の分解が進むことが目詰まりの軽減につながることも考えられる。したがって、細粒土砂の特性の調査を行う。 以上の24年度より継続する目的に加え、25年度はトレーサー注入実験を用い細粒土砂が河川間隙水域に与える影響を区間スケールでも調査する。また、地下水モデルのシュミレーションを用い、河川地形が河川水の伏流に与える影響も加味して評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品: 現地観測に必要なセンサ類、サンプリングに必要な補給品、その他資材等と購入のために計上。 旅費:現地調査へ通うための交通費を計上.また、研究成果を国内外の学会大会(応用生態学会、水文・水資源学会、AGU)で発表するための旅費を計上。 謝金: 次年度はトレーサー実験を行うために、より人手が必要となるため、調査地での定期観測やフィールド実験の調査補助費を増加して計上。 その他: 国際学術論文投稿費を計上。
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