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2013 年度 実施状況報告書

山地河川において土砂流送に伴う目詰まりが河川間隙水域に及ぼす影響

研究課題

研究課題/領域番号 24780153
研究機関九州大学

研究代表者

笠原 玉青  九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10622037)

キーワード細粒土砂 / 河川間隙水域 / 渓流
研究概要

生息場や産卵床の提供など、河川生態系内で様々な役割を持つ河川間隙水域が、注目を集めている.その拡がりや機能は時間的・空間的に変動することが認識されているが、変動をうながす要因、特に土砂が及ぼす影響に関する研究はほとんどされていない。本研究では、細粒土砂に注目し、その量や濃度の変動を調べ、河川間隙水域の時間的変動を考察することを目的とした。
土砂流出が多い山地河川において、細粒土砂を観測するフィールド調査を軸とした。河川間隙水域は地下にあるために難しいため、観測方法を模索した結果、以下3つの方法を用いて出水時・季節的な細粒土砂の変動を観測した。パイプを河床に埋めて間隙水を抜き取り細粒土砂濃度をはかる、河床の土砂を凍らして採取する、河床に土砂トラップを設置し細粒土砂量を量る。また、トレーサー実験を用いて河川間隙域の広がりを測り、細粒土砂量の変動との関係を考察した。
間隙水の採取は一度パイプを埋めると同じ場所で定期的にできる。出水時において、河川水が河床に浸透する水の動きが観測され、その動きが大きい場所ほど、細粒土砂濃度が高かった。細粒土砂濃度と流路内環境との関係は、流速・水深が大きい場所程高い傾向が見られたが、河床に堆積する細粒土砂量との関係はみられなかった。土砂を凍らして採取する方法はパイプによる方法に比べ浅い部分の河床土砂を対象とした。この部分では、細粒土砂量は出水に伴い減少する傾向が見られた。これらの結果より、出水時に河床で細粒土砂の変動が起こるが、その変動傾向は深さによって異なることが示唆された。出水単位ではなく、数ヶ月といった長期間で細粒土砂量の変動を観測すると、河床の水の通しやすさを示す指標である透水係数が減少する傾向がみられた。これらの結果を、河川間隙水域の広がりの変動と比較し考察を行っていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では、河床堆積域において細粒土砂の観測と、区間・地点スケールでの河川間隙水域の広がりの変動を調査し、細粒土砂が河川間隙水域の時間的変動に与える影響を考察することを目的としている。河川間隙水域は、地下に存在するためにその観測が難しく、細粒土砂の観測方法の模索が大きな課題の一つであった。
複数の方法を試みた結果、深度の違いや時間スケールの違いによって、異なる方法を用いて細粒土砂濃度・量の変動を把握することができた。調査地において、出水時に河床で細粒土砂の変動が起こるが、その傾向は深さによって異なる。浅い部分(5-10cm)では細粒土砂量の減少、深い部分(15-25cm)では上昇した。また、数ヶ月といった長期間で細粒土砂量の変動を観測すると、細粒土砂濃度は大きくなり、河床の水の通しやすさを示す指標である透水係数が減少する傾向があることがわかった。この長期スケールでの変動の観測は継続している。
区間スケールで河川間隙水域の広がりを測るトレーサー実験は、流量に影響を受けるために出水時の変動の評価はできない。そこで、数ヶ月スケールでの細粒土砂濃度の変動と比較するために行っている。長期スケールでの細粒土砂は続いているので、トレーサー実験も繰り返し行い、土砂データと一緒に考察を行う。これからは、地点スケールでの河川間隙水域の広がりのシュミレーションも行っていく。

今後の研究の推進方策

これまで細粒土砂濃度の変動の観測に重点をおいてきた。本年度は、河川間隙水域の広がりに重点をおいて調査を行い、細粒土砂濃度が与える影響を考察していく。
昨年度より行っているトレーサー実験は、区間平均の河川間隙水域の拡がりを定量することができる利点があるが、細粒土砂濃度の変動は区間内でのばらつきがとても大きいことがわかった。そこで本年度は、短い区間での調査しかできないが、拡がりのバラツキを定量できる地下水モデルも用いる。この方法では、河川地形の与える影響が評価できたり、伏流する河川水量やその滞留時間をシュミレートすることができる。この方法により、シュミレートした地点スケールでの間隙水域の広がりと細粒土砂の変動を考察する。
研究結果を国際学会で発表し、論文の執筆を行う。

次年度の研究費の使用計画

H25年度にフィールド観測を継続していたが、梅雨の高水イベントで設置していた間隙水域観測網が2度も流されてしまったため、調査地の復旧と、再測量、他の観測方法の模索に時間がかかった。そのため、河川間隙水域の広がりの変動の調査へ取り掛かるのが遅れてしまい、特にMODFLOWを用いた地下水流のシュミレーションがまだ終わっていない。次年度には、トレーサー実験に加え、MODFLOWによるシュミレーションを行い、その結果も踏まえて、国際学会での発表や論文の執筆を行いたい。
H26年度は、補足の測量やトレーサー実験、MODFLOWによるシュミレーションを行う。それらの結果を、間隙水域の細粒土砂の変動と共に分析を行い、細粒土砂変動が間隙水域の時間的変動へ与える影響を考察する。
これらの結果を国際学会で発表し、論文の執筆を行う。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 新建川の河川間隙水域における細粒土砂濃度の変動2014

    • 著者名/発表者名
      安田悠子、笠原玉青、大槻恭一
    • 雑誌名

      九州大学農学部演習林報告

      巻: 95 ページ: 5-9

    • 査読あり
  • [学会発表] Changes in Distribution of Fine Sediments in the Hyporheic Zone during High Flow Events2013

    • 著者名/発表者名
      Tamao Kasahara, Yuko Yasuda, Kyoichi Otsuki
    • 学会等名
      American Geophysical Union
    • 発表場所
      San Francisco
    • 年月日
      20131209-20131213
  • [学会発表] 出水に伴う河床の土砂堆積と河床間隙内の細粒土砂濃度の変動2013

    • 著者名/発表者名
      笠原玉青、安田悠子、大槻恭一
    • 学会等名
      応用生態工学会
    • 発表場所
      大阪府立大学
    • 年月日
      20130918-20130921

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公開日: 2015-05-28  

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