研究課題/領域番号 |
24780161
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
松永 孝治 独立行政法人森林総合研究所, 九州育種場, 主任研究員 (40415039)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | クロマツ / マツ材線虫病 / 抵抗性 / 環境要因 |
研究概要 |
本研究は苗畑,温室および人工気象装置内におけるマツノザイセンチュウ(以下,線虫)接種実験により,抵抗性クロマツにおける抵抗性発現に影響する環境要因を明らかにすることを目的としている。 今年度は抵抗性の発現に及ぼす光環境の影響を明らかにするため,抵抗性の自然受粉4家系(波方ク-73,波方ク-37,志摩ク-64,田辺ク-54)と精英樹の自然受粉4家系(県川辺37,県南松浦112,県南高木102,県肝属39)の2年4ヶ月生の苗に線虫を接種して,その後の病徴進展を調べた。光条件は寒冷紗により3段階(被陰なし,50%被陰,80%被陰)に変えた。線虫はアイソレイトSC9を用い,各苗に5,000頭接種し,針葉の変色割合を隔週で調べた。全針葉が変色した苗を枯死とした。 被陰なしでは接種4週後から苗が枯死し,接種8週後に枯死率は51%になった。50%被陰と80%被陰では,どちらも接種2週後から苗が枯死し,接種8週後にはそれぞれ88%と99%の苗が枯死した。抵抗性と精英樹の接種8週後の枯死率はそれぞれ,被陰なしで39%と63%,50%被陰で84%と94%,80%被陰で99%と100%であった。線虫接種から苗が枯死するまでの時間について,クロマツ家系,被陰処理およびそれらの交互作用を共変量としたCox回帰によってモデル選択を行った。その結果,クロマツ家系と被陰処理を共変量としたモデルのAICが最も低くなった。 これらの結果から,光条件の悪化によって,抵抗性家系および精鋭樹家系の生存率が低下し,枯死時期が早くなること,つまり抵抗性マツであっても光条件の悪化で抵抗性の発現が阻害されること,また,被陰条件下でも抵抗性マツは精英樹より枯損しにくいことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光条件の違いが抵抗性に及ぼす影響を明らかにするための接種実験は計画通りに実施した。その結果は平成25年3月に岩手大学で行われた日本森林学会大会で発表した。また,平成25年度以降の接種実験に用いる人工気象器を購入し,クロマツポット苗を予備的に養成した。 以上,平成24年度当初に計画していた内容をほぼ実行できたため,達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,土壌含水率が抵抗性発現に及ぼす影響を明らかにするため,温室内で灌水条件を変えて接種実験を行う。また,気温および湿度が抵抗性発言に及ぼす影響を明らかにするため,人工気象器内で気温および湿度を変えた条件で接種実験を行う。野外のクロマツ林において,各種の環境要因を測定する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は温室内および人工気象器内での接種実験を行う予定である。そのため,線虫の培養やクロマツの育苗に必要な物品費や人件費として研究費を使用する。また,野外のクロマツ林において各種の環境要因を測定するため,旅費や物品費(測定器具)として研究費を使用する計画である。
|