研究概要 |
本研究は苗畑,温室および人工気象装置内におけるマツノザイセンチュウ(以下線虫)接種実験により,抵抗性クロマツにおける抵抗性発現に影響する環境要因を明らかにすることを目的としている。 今年度は昨年度の結果を受けて,光環境が及ぼす影響を検討するため2つの実験を行った。一つ目の実験は被陰の程度が異なる寒冷紗を用いて,光環境を6段階に変えた条件下(65,50,40,30,15,0%被陰)で抵抗性と精英樹のクロマツ各2家系に線虫の人工接種を行った。その結果,65,50%被陰区は0%被陰区に比べて有意に枯損しやすかった。また,抵抗性の2家系はどちらも精鋭樹家系より枯損しにくかった。二つ目の実験は自然受粉した抵抗性のクロマツ1家系に対して,個体の全体を被陰する処理区(全被陰区),個体の半分を被陰する処理区(半被陰区),および被陰しない処理区(無被陰区)を設け,線虫の人工接種を行った。この時,半被陰区の苗について,被陰されている枝に接種する個体(半被陰区陰接種)と被陰されていない枝に接種する個体(半被陰区陽接種)に分けた。実験全体の枯死率は非常に低かったため,発病率について解析を行った。その結果無被陰区と全被陰区ではそれぞれ23%と53%の苗が発病した。一方,半被陰区陽接種と半被陰区陰接種はそれぞれ30%と53%の苗が発病した。 野外の海岸クロマツ林として福岡県福岡市にある生の松原において,その光環境を把握するため,3Dスキャンによる測量を行った。 また,抵抗性の発現に気温が及ぼす影響を検討するため,自然受粉した抵抗性と精英樹のクロマツ各2家系を人工気象装置内で養成し,線虫を接種した。気象室内の光条件は14L10Dとした。気温は高温区で昼間と夜間それぞれ35℃と30℃,普通区では30℃と25℃とした。精鋭樹家系は抵抗性より枯れやすく,また,高温区は普通区より苗が有意に枯れた。
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