研究課題/領域番号 |
24780165
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 兵庫県立人と自然の博物館 |
研究代表者 |
布野 隆之 兵庫県立人と自然の博物館, その他部局等, 研究員 (60623113)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 希少種の保全 / 生息地管理 / レーザープロファイラー |
研究概要 |
ニホンイヌワシの餌利用は、ブナの葉の消長と対応し、落葉期にはノウサギ、展葉期にはヘビ類となることが報告されている。これは、絶滅危惧種であるニホンイヌワシが周年、安定して餌を利用するには、ノウサギとヘビ類がセットとして必要となることを意味している。このような状況を踏まえ、本研究はブナの葉の落葉期と展葉期を対象に、ニホンイヌワシが餌を捕獲する上で鍵とする環境の特徴を明らかにすると共に、本種に一年を通じて安定して餌を供給する生息地管理策を立案することを目的とした。 研究の初年度となる平成24年度は、ニホンイヌワシが餌を捕獲する上で鍵とする環境の特徴を評価するための基盤整備を主に行った。特に、申請者らの事前調査にて、ノウサギとヘビ類の捕獲地点は、共にブナ林に形成された開空部(以下、林冠ギャップとする)である点で一致するものの、その大きさや形などの空間特性には大きな相違があるが観察されていたことから、本研究では、新たな空間解析技術として着目されているレーザープロファリングの手法を用いることにより、林冠ギャップの空間特性を正確に把握することを試みた。 レーザープロファイリングは、2012年8月にレーザプロファイラーを搭載したセスナ機を用いて調査つがいの行動圏2,555haを対象に実施された。本研究におけるレーザーの照射頻度は、1秒間に20万発であった。その後、レーザープロファイリングによる標高誤差を検証するために、2012年11月に調査つがいの行動圏の4地点にて、GPSを用いた標高測量を行った。現地にて得られた標高を基にレーザープロファイリングによる標高誤差を検証したところ、誤差は-1±3cmであり、樹高の高低差による林冠ギャップの判読に十分に適用できるデータであることが立証された。現在は、樹高の高低差による林冠ギャップの判読を終え、その空間特性を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、1)レーザープロファイリング技術を用いて林冠ギャップの判読を行い、その後、2)ニホンイヌワシの採餌に重要な林冠ギャップの空間特性を解析し、その特徴を有する林冠ギャップの分布をイヌワシ行動圏内にて評価した後に、3)得られた分布を地図上に図示し、それらを現状維持する保護区づくりや、林冠ギャップの未分布な区域での人為的なギャップ創出方法を検討し、これらの手法を組み合わせたニホンイヌワシの生息地管理プランを構築する計画である。このうち、平成24年度は1)および2)を実施する予定であった。1)については、誤差-1±3cmの精度にて樹高の高低差による林冠ギャップの判読が実施されたため、当初の計画どおりの実績を残すことができたと判断できる。一方、2)については、当初の計画よりやや遅れ、現在も解析中である。ただし、6月中にすべての解析は終了する予定であり、計画に大幅な遅延が生じる訳ではない。よって、1)および2)の現状を鑑みると、現在の達成度としては、当初の計画どおりおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に実施した1)および2)の研究結果を基に、調査つがいの行動圏内にてニホンイヌワシの採餌に重要な林冠ギャップの分布図を作成し、それらを現状維持する保護区づくりなどの生息地管理プランを構築する計画である。ただし、2)の解析の終了時期は、平成25年度の6月まで遅延する見込みであるため、本年度の調査計画は、6月以降に推進することとなる。 上記のように平成25年度研究は当初の計画よりやや遅れて実施することとなるが、大幅な遅延ではないため、本年度の研究計画を変更・修正する必要はないと判断できる。よって、今後は6月までに2)の解析を終了させた、その後、当初の計画どおりに平成25年度の研究計画を実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究項目としては、(1)調査つがいの生息地管理プランの構築、および(2)精度検証があげられている。 (1)では、平成24年度の研究結果を基に、調査つがいの餌の捕獲に重要な林冠ギャップを効果的に現状維持する保護区域の大きさや配置などを机上にて検討する。研究費としては、上記の解析に必要なアプリケーションなどの消耗品費として16万円を計上する予定である。一方、(2)では、主に調査つがいの行動圏内での野外調査となるため、現地までの旅費35万円、調査補助員の人件費5万円を計上する予定である。 以上の内訳により、平成25年度の研究費の総額56万円をすべて執行する計画である。
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