研究概要 |
製紙工場から排出される製紙汚泥であるペーパースラッジ(PS)は、大部分は焼却した後埋立て処分となるためCO2の排出量や廃棄物過多が問題となっている。そこでPSに含まれるセルロースやヘミセルロースをバイオマス燃料の原料とし、発酵糸状菌を用いてPSからの効率的エタノール生産を目的とし、研究を行った。 まず、Klason lignin法を用いてPSに含まれる成分分析を行った結果、セルロース22.5%、ヘミセルロース10.2%、有機物25.4%および無機物41.9%であることがわかった。次にPSから効率よく発酵糖を生成するため、実験計画法を用いて最適セルラーゼ剤の混合比を算出した。その結果、Accellerase:Meicerase:Pectinase=1.907:0.384:0.710の混合比がPSの加水分解に望ましいことがわかった。さらに、PSからのエタノール生産に適したMucor属糸状菌を検索し、Mucor circinelloides NBRC 4563株を選択した。しかしこれらを用いたPSの同時糖化発酵の発酵効率は41%であり、エタノール生産の効率化が必要であった。そこでまず発酵阻害の可能性のある無機物について蛍光X線分析装置(XRF)を用いて分析したところ、主にAl,Si,Ca,Feが含まれており、特に製紙填料由来のCaが30%を占めていた。そこで培地成分中の(NH4)2SO4がCaと石膏を形成しないようNH4H2PO2に変更した。また、NaOHに浸漬することで有機物を10%除去でき、その後にHClに浸漬することで無機物を19%除去することができた。NaOH-HCl処理後のPSの発酵糖含量は62%となった。 以上の結果をふまえ、最適化セルラーゼカクテルおよび4563株を用い、NaOH-HCl処理PSの同時糖化発酵を検討した結果、発酵効率は67%に上昇することができた。
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