研究課題/領域番号 |
24780167
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
細尾 佳宏 信州大学, 農学部, 准教授 (80377184)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 木質形成 / 針葉樹 / 細胞壁 / 遺伝子 |
研究概要 |
樹木が生産する木材の本体は、木部細胞の細胞壁である。木材の様々な性質と密接な関係がある細胞壁の形成機構を解明することは、木材の生産性や材質を理解し木材を有効利用する上で重要な課題である。代表者らは、針葉樹の木材細胞壁形成において壁成分(セルロース、ヘミセルロース)が日周性を持って供給されることを明らかにしてきた。本研究課題は、セルロースとヘミセルロースの生合成における日周性を遺伝子レベルで解析し、木材細胞壁形成の日周性のより詳細な機構を解明することを目的としている。 本年度は、セルロース生合成に関わる遺伝子発現を中心に研究を始めた。スギの苗木を12時間明期/12時間暗期に設定した人工気象器内で生育させ、照明の点灯または消灯直後から3時間間隔で分化中木部細胞を採取した。そして、UDP-グルコース(セルロース生合成の基質)の生合成やセルロースの高分子化に関わる遺伝子について、分化中木部細胞における1日(24時間)の中での発現量の変動をリアルタイムPCRで解析した。その結果、解析した遺伝子の発現パターンは、①照明点灯中(明期)に発現量が増加し点灯後3~6時間後に発現のピークを迎え、消灯中(暗期)は発現量が低いという日変動を示すものと、②発現量に大きな変動が見られないものに大別された。発現に日変動が見られた遺伝子には、セルロースの高分子化に関わるものも含まれていた。以上のことから、針葉樹の木材細胞壁形成においてセルロースの生合成は日周性を持って変動し、昼(明期)により活発になる可能性が示唆された。本年度の研究から、従来の研究では不明であったセルロースの生合成段階での日周性や、針葉樹の分化中木部における細胞壁形成に関わる遺伝子発現の日周性について、新規の知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
信州大学農学部の改修工事に伴い、研究室の移転・再セットアップに数ヶ月間を費やさざるを得ない状況となり、研究の始動が遅れたとともに実験の進行具合にも予想以上に影響を受けた。特に、リアルタイムPCRを用いた遺伝子発現解析について十分には行えなかった。ただ、遺伝子発現解析に必要な試料の準備(試料採取、RNAの抽出、逆転写)は当初計画通りに行った。リアルタイムPCR解析はある程度繰り返し作業のため、迅速に繰り返し行うことにより、遅れは取り戻せる状況である。
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今後の研究の推進方策 |
セルロースの生合成に関わる遺伝子に関する解析を本年度から継続して行い、より信頼性の高いデータを挙げることを目指す。そして、まだ十分な知見が得られていないヘミセルロース(針葉樹材の主要ヘミセルロースであるグルコマンナンとキシラン)の生合成や分泌に関わる遺伝子について、解析を進めていく。苗木の栽培、試料採取などの遺伝子発現解析用試料の準備は、予定通り進んでいる。リアルタイムPCRを用いた解析をより精力的に行い、当初計画どおりに解析を完了できるよう努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
改修工事に伴う研究室の移転・再セットアップにより研究がやや遅れた、そして当初計画時よりも備品を安価で購入できたため、次年度使用額が生じた。次年度は、試料採取や遺伝子発現解析などの実験用消耗品と、学会での成果発表・情報収集のための旅費を中心に研究費を使用する予定である。研究の遅れを取り戻すため、遺伝子発現解析用の試薬、器具類について本年度よりも多くの研究費を使用する予定である。
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