研究課題/領域番号 |
24780168
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
青木 弾 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (80595702)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | セルロース / リビング重合 / ATRP / ポリマーブラシ / 高次構造 |
研究概要 |
H24年度は、新規セルロース誘導体の合成ならびにリビング重合法を確立し、目的とする制御された高次構造を有する材料を調製することを計画していた。当初の計画では円柱タイプおよび平面タイプの構造制御材料を予定していたが、円柱タイプについてはH24年度の関連する国内学会および国際会議の場において、既に他研究グループが結果を公表していたことから、本研究を平面タイプに集約することとした。研究の成果として、均一系によるセルロース誘導体の合成法確立ならびに構造解析を完了し、リビング重合を用いたポリマー材料の合成までを達成することが出来た。得られた成果について平成25年3月にオーストリアで行われたセルロース関連の国際会議【CarboSummit2013】にて口頭発表を行った。各項目について得られた具体的な結果を以下に述べる。 セルロース誘導体の合成では側鎖種の選択と、繰り返し単位に存在する3つの水酸基の置換度を制御することによって、溶剤溶解性を幅広く制御出来ることを見いだした。目的とする高次構造制御材料の達成には均一系および不均一系での反応を利用する必要があること、フィルム作成には揮発性の高い溶剤に溶解することが好ましいことなど、いくつかの条件があるが、これらを満たすことが出来た。 リビング重合法について、まずはモデル系での実験を繰り返して反応の再現性・収率などを改善した。また得られたポリマーについて分析手法を検討し、最終的にはNMRおよびGPC測定によりモノマー転換率および分子量を経時的に追跡することが出来た。 セルロース誘導体を出発として、確立されたリビング重合法の適用を行い、ポリマー材料を得た。得られた試料についてはそのまま、あるいは加水分解によりセルロース成分と合成高分子成分を分離した上で、IR、NMR、GPC測定を行い、目的とする反応が進行していることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度の計画は【試料調製】であり、目的とする構造として円柱タイプと平面タイプの2種類を計画していた。しかしながらH24年度の関連する国内学会および国際会議の場において、既に他研究グループが結果を公表していたことから、本研究のリソースを平面タイプに集約することとし、セルロース誘導体の合成ならびにリビング重合法の確立、構造解析手法の検討をH24年度の達成すべき目標として再整理した。 セルロース誘導体の合成は均一系出発で幅広い置換度の制御を達成した。また置換度に応じて溶剤溶解性を幅広く制御することが出来たため、均一系および不均一系でのリビング重合反応、ならびにスピンコート法による薄膜作製が可能となった。リビング重合法について、原子移動ラジカル重合(ATRP)およびARGET(Activators ReGenerated by Electron Transfer)-ATRPの検討により、多分散度の低いポリマーを合成することが出来た。得られたセルロース誘導体の薄膜を出発としてリビング重合を行い、反応が進行していることをIR、NMR、およびGPC測定より確認した。 以上の結果より、当初予定していたH24年度の研究計画である「試料調製」について、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度はまずフィルムを出発としたリビング重合について検討を重ね、重合ポリマーの分子量、密度、ならびに分子構造について様々な状態の試料を調製する。得られた複合ポリマー材料について特に高次の構造解析を行う。さらにエネルギー応答性の評価を行い、本研究課題で設計した材料の構造特性を明らかにする。得られた成果をまとめて、新規材料の構造設計の指針となるように考察を整理し、発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
試料調製に必要な物品の調達はH24年度予算でおおよそ達成できた。H25年度はまず合成試薬の購入と、リビング重合の精度向上のための高純度アルゴンガス、液体窒素の費用が必要である。さらにエネルギー応答性の評価として、誘電特性および熱伝導特性の分析、またフィルム厚の精密測定としてエリプソメトリーによる分析を行う必要がある。これらの測定にはそれぞれ高価な装置が必要であり、当研究予算の範囲で購入することは不可能であるため、おおむね外部への測定依頼とする予定であり、そのために費用が必要である。以上の内容について研究費を使用する。
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