本研究の目的は、二重エネルギーX線吸収法という人体の骨密度や体脂肪率の測定に利用されている測定原理を木材の含水率計に適用することが可能かどうかを明らかにすることであった。管電圧15 kV~40 kVの範囲で発生させたX線を用いて木材の含水率計測が可能であることを報告した(Wood Science and Technology 2013)。一方、40 kV~100 kVのX線と木材・水との相互作用に関しては多くの未解明な部分が残り、これは今後の課題である(投稿準備中)。総じて、二重エネルギーX線吸収法は木材の含水率測定に有用であることが示された。今後はこれを産業的な応用につなげるための研究開発を行う必要がある。また、発展的内容として申請書に盛り込み、社会的要請を踏まえて優先的に実施した、木材中に溶解したセシウム塩のX線による観察手法の開発については、セシウム原子のX線遮蔽能が大きいことから、単X線によりセシウム塩の挙動が非破壊で観察可能であることが明らかとなった(Holzforschung in press)。二重エネルギーX線吸収法を用いた木材中のセシウム塩の検出については今後の課題である。
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