研究課題/領域番号 |
24780172
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
大塚 祐一郎 独立行政法人森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, 主任研究員 (80455261)
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キーワード | 放射性セシウム / 2-ピロン4,6-ジカルボン酸 / リグニン / 植物バイオマス / 代謝工学 / アルカリ金属キレーター |
研究概要 |
PDCは木質系芳香族バイオマスから組換え微生物発酵により生産されるプラットフォームケミカルスであるが、I族のアルカリ金属キレーターというユニークな特徴も持ち合わせている。また、同じI族のアルカリ金属の中でも特にCsと優先的に相互作用し錯体沈殿を生じることから、現在深刻な問題となっている放射性セシウムの選択的な沈殿除去に使用できると考えられている。昨年度までにPDC-Cs錯体は2つのCs原子を12のPDC分子が取り囲むように相互作用し、巨大かつ複雑な錯体を形成していることが明らかとなっている。そこで今年度は、PDCがどの程度低濃度のCsを除去できるのかを評価した。PDCによるCs除去試験を行うために、まずは実験に使用するPDCを組換え微生物発酵により作成した。PDC高生産組換えバクテリアPseudomonas putida PpY1100/pDVZ21をジャーファーメンターで高密度培養し、そこにバニリン酸を滴下することによりPDCを発酵生産した。得られた発酵液から連続溶媒抽出および再結晶による精製を経て高純度PDCを約100g得た。得られたPDCを用いてPDC水溶液によるCs捕捉試験を行ったところ、500mMのPDC水溶液では100ppm程度のCsまでは捕捉することが出来るがそれ以上低濃度になると、錯体を形成できなくなり、除去できないことが示唆された。この結果からより低濃度のCsを捕捉する条件を検討するためには滴定試験による錯体安定度定数を決定し、様々な条件下での錯体形成条件を理解する必要があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も研究遂行に必要な2-ピロン4,6-ジカルボン酸(PDC)を十分量かつ高純度に微生物発酵により作成することが出来た。また、このPDCを使って水溶液中でのセシウム捕捉能を評価することが出来、新たな課題を見いだすことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2-ピロン4,6-ジカルボン酸(PDC)のセシウム捕捉能を最適化するために、錯体安定度定数を明らかにする必要がある。また、PDC-Cs錯体の形状から新たな捕捉システムのデザインも試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定よりも簡便な方法でPDCのCs捕捉能を評価できたために、微量分析用の消耗品を購入する必要がなくなったため。 PDCによるCsの捕捉能を強化するために、新たな試験をデザインする必要が生じた。今年度生じた差額は、新たにデザインする追加試験に使用する予定である。
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