研究課題
近年、西日本では、植食性魚類の摂食活動によって藻場が衰退している。温暖化によって藻場を構成する大型褐藻が摂食されやすくなっているのかもしれない。本研究では、褐藻の化学的防御が高水温によって弱まるか否かを検証した。当初の計画では、褐藻を水温2段階の条件で培養し、摂食阻害物質フロロタンニンの含有率とウニによる被食量を比較する予定であったが、褐藻のフロロタンニン含有率は貧栄養条件よりも富栄養条件で低下することが報告されていたため、栄養塩濃度2段階、水温3段階の複合条件下で培養を行った。より具体的には、秋田県男鹿半島鵜ノ崎沿岸で採集した褐藻ヤツマタモクから主枝を切断し、栄養強化培地1/4PESI(富栄養)あるいは天然海水(貧栄養)とともに500mlフラスコに入れ、水温10、20、30℃の3段階で9日間培養した。培養前後に主枝の湿重量を測定し、相対成長率を求めた。また、購入した分光光度計を用いて、主枝上部と下部のフロロタンニン含有率を測定した。湿重量の成長率は、20℃でもっとも高く、30℃が次ぎ、10℃で低く、いずれの水温においても貧栄養条件よりも富栄養条件で高くなる傾向が認められた。フロロタンニン含有率は、富栄養条件よりも貧栄養条件で高くなる傾向が認められたが、富栄養条件では水温による変化が認められないのに対して、貧栄養条件では10℃よりも20~30℃で低くなった。また、上部と下部で比較すると、10℃の両条件と20℃の富栄養条件では下部よりも上部が高い傾向が認められたのに対して、20℃の貧栄養条件および30℃の両条件では下部よりも上部が低くなる傾向が認められた。このように、ヤツマタモクのフロロタンニン含有率は、天然海域の栄養塩濃度では、特に主枝の上部において、高水温によって低下することが明らかになった。この結果、植食動物によって摂食されやすくなるか否かについては今後の課題である。
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Journal of Applied Phycology
巻: in press ページ: in press
DOI: 10.1007/s10811-013-0002-y
巻: 25 ページ: 567-574
DOI: 10.1007/s10811-012-9891-4
巻: 25 ページ: 269-275
DOI: 10.1007/s10811-012-9861