研究課題
河口域は、海洋生態系の中で最も高い生産性を誇り、食糧供給や二酸化炭素吸収、水質浄化作用を通じて人類に多大な恩恵をもたらす。しかし、そうした生態系機能の拠所となる生物生産過程については踏み込んだ議論がなされておらず、その理解は大きく立ち遅れている。本研究では、既往研究に基づき、河口域の有する高い生産性が、海洋と河川から流入する資源、すなわち、他生的資源に依存すると考えた。そして、そのような他生的資源が、餌資源としてだけではなく、生物に隠れ家や巣穴の材料を提供することで空間資源として機能すると仮定し、その機能を検証する事とした。調査は伊豆半島南部の複数の河口砂浜域とした。各砂浜域において、他生的資源の流入量を把握するために、懸濁態有機物および堆積有機物を定量し、それらの由来を把握するために、それら有機物を各生産者と共に炭素・窒素安定同位体分析に供した。また、その場に形成される底生動物の生物量を定量し、それらが利用する餌起源の把握のために炭素・窒素安定同位体分析に供した。その結果、底生動物の種数、個体数、生物量は、外洋および河川の両者からの他生的資源が多い浜で大きくなる傾向が認められた。実際に、底生動物が利用する資源の由来を検討した結果、他生的資源が多く利用されていた。河口域に形成される底生動物群集には有用種が多数含まれ、従って、それらの生物資源の持続的利用には、海洋と河川の両者の繋がりが重要であることが示唆された。
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