研究概要 |
多核単細胞性緑藻であるハネモは、細胞損傷により流出したオルガネラが自然に凝集し、プロトプラストが形成される特異な再生機構を有する。本研究では、ハネモの同機構に着目し、これを利用した同藻への外来遺伝子導入法について検討した。まず、先行研究ではハネモ内在性遺伝子elongation factor 1 alpha(EF-1a)の転写調節領域1,046 bpでは外来遺伝子の発現がみられなかったため、さらに上流域の獲得を目指し、inverse PCR法に供することで、1,572 bpの推定EF-1aプロモーター領域のクローニングに成功した。同ハネモEF-1aプロモーターおよび緑色蛍光タンパク質AcGFP遺伝子またはルシフェラーゼ(hRluc)遺伝子をレポーターに用いたハネモ用発現ベクターを構築し、ハネモ雄株を対象に1)藻体へのパーティクルガン法、2)藻体を細断後、形成されたプロトプラストへのトランスフェクション法、または3)ベクターを添加した人工海水中で藻体を細断しプロトプラストを形成させる手法、によりハネモへの導入を試みた。その結果、いずれの手法においても外来遺伝子の発現はみられなかった。今後、藻体の処理方法ならびに使用するDNA量など、更なる条件検討が必要である。また、先行研究でハネモにおいて外来遺伝子発現が認められた手法が他種海藻へ適用可能か検討するため、養殖種であるクビレズタ(ウミブドウ)への導入を試みた。すなわち、ハネモで行った手法を参考に、外来遺伝子にhRluc mRNAを用い、1)クビレズタ藻体を細断しwound healing後にトランスフェクションする手法、または2)外来遺伝子を添加した人工海水中で藻体を細断しwould healingさせる手法、により同藻への導入を試みた。その結果、ハネモとは異なり、同藻ではレポーターの発現が確認されなかった。
|